たやすみなさい (現代歌人シリーズ)
「たやすみなさい (現代歌人シリーズ)」のおすすめレビュー
発売後1カ月で3刷! 誰もが知っているけど、誰も知らない感情と情景を描く歌人・岡野大嗣の歌集第二弾『たやすみなさい』
『たやすみなさい』(岡野大嗣/書肆侃侃房) 〈二回目で気づく仕草のある映画みたいに一回目を生きたいよ〉。短い言葉に詰まった切実さが共感を呼ぶのか、岡野大嗣さん2作目の著作となる『たやすみなさい』(書肆侃侃房)は、新人の歌集としては異例の人気を呼び、発売後わずか1カ月で重版を二度も重ねた。 誰もが想像することができる、というのは特に短歌においては重要な要素だと思う。それは決して「わかりやすい」とか「単純」だとかいうことではなく、誰もが心のなかに自分だけの情景を思い浮かべることができる、そのとっかかりをくれるということだ。 〈みぞれ、みぞれ、みぞれはぼくの犬の名で祖父が好んだ氷の味だ〉 〈404 not found 初夢のどこにあなたは隠れていたの〉 〈冬と春のあいだになにか秋っぽいのりしろを見つけてそこにいる〉 みぞれなんて犬は飼っていないし、祖父が好んだ味でもない。誰かを探すような初夢を見た記憶もない。冬と春のあいだに秋っぽさがあるなんて考えたこともなかった。それでも、知っている。この言葉の隙間に流れている感情を、私は確かに知っている。そんな奇妙な懐かしさと切なさが、…
2020/1/11
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たやすみなさい (現代歌人シリーズ) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
岡野大嗣の歌集。タイトルの意味は「自分のためのおやすみで『たやすく眠れますように』の意」だそうである。ここに収録された歌群は、いずれもいたって日常的な語彙で構成されている。また、複雑な技法を駆使するものでもない。にもかかわらず、私には今一つ、すっきりとその歌の世界に投入することが難しい。タイトルに覚えた違和感をそのまま引き摺ってしまう故だろうか。あるいは日常感に馴染めないのだろうか。「すきな作家の新刊をお気に入りの本屋へお気に入りのサンダルで」。「きみとただ花火したくてよく冷えた水道水を飲みながらした」。
2024/06/10
だいだい(橙)
表紙がキラキラしてきれい。イラストがかわいい。小さいセクションに分割されており、セクションのタイトルがイラストだけでできているものがいくつもあって面白かった。第一歌集「サイレンと犀」と比べて青臭さが影を潜め、落ち着いた生活が垣間見えるが、映画好き、音楽好きは変わらず、ただごと短歌の彩となっている。春から夏への季節の描き方が好き。私が昨年詠んだ短歌と同じ発想の歌があって、ちょっと嬉しかった。「スタバよりミスドがいいねぼそぼそと暗くないこと話したいとき」この人、めっちゃミスド好きみたい。大阪人だから?
2023/04/02
ポテチ
ねむれない夜にわたしたちには短歌があるじゃないというように愛そう
2019/11/04
Y
すごく良い。ミスド、カラオケ、ミュージックプレイヤーから流れるお気に入りの音楽、布団の中、パン屋のトング、持たせてもらった紙袋の中のネーブル。その一つ一つは人の人生を語る時に真っ先にあげられるものではないかもしれないが、他人にとってはとるに足らないような愛すべきもので一人の人間は構成されているんだと改めて思った。人のあまりに私的な部分を見せてもらったような気がする。共通の体験をしたわけじゃないが、この歌集を通じて喚起される思い出がいくつかある。本書を読んだ人と本書に収められた短歌ベスト5を発表し合いたい。
2021/01/24
Maki
ギターひけなくてあきらめたけどウクレレならひけるかなやろうかな。みたいな。30分思い出すために聴く君の好きな曲を歩きながら聴く。みたいな。←これはわたしの脳内。なんか、短歌みたいに脳内おしゃべりのような短歌。すき!すき!すきだー!知ってる気持ちのような。見てきたもののような。ここにこれがすきって書きたいけど多過ぎて無理。ほぼ全部すき。最近は小説が読めなくて毎日これ読んで、たやすみなさい♡って思って眠る。ポストカードとピック付き最高!やすふくさんの絵もすき♡
2019/10/16
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