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観念結晶大系

観念結晶大系

観念結晶大系

作家
高原英理
出版社
書肆侃侃房
発売日
2020-11-21
ISBN
9784863854260
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観念結晶大系 / 感想・レビュー

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田氏

史実の世界と観念の世界とが結ばれていき、ついにはヴンダーヴェルト、"驚異の世界"として爆発する。結晶として物質化された意志や夢想は、幻想的な作中世界から、われわれにできることは何か?と問うてくる。作中のさまざまな対立構造は、観念と理想の世界と対立する世界、実存と現実に反論機会を与えることで、「無限に広い人の心の、それでもまだ届かない場所」を感じさせる舞台装置となっている。それだけに、対立相手があまりに陳腐に描かれていることが、「賢さ」と「愚かさ」という単純明快な対立に見せてしまっているのが残念ではあった。

2022/07/16

ハルト

読了:◎ 物語すべてがヴンダーヴェルト(驚異の世界)で組上がっているような。結晶のきらめきや散らばりが観念を魅了する。硬質でひやりとした知性。結晶とははたしてなんなのか。結晶を口中でなぶり、愛でて、歌うよう響きながら、結晶たちの世界は、そこに存在する。世界の謎めいた美しさを、結晶に封じこめて、その内を覗いたような読後感。もしかしたら手のひらに今、正十二面体の結晶が乗っかってあるかもしれない。そんな幻想を信じたくなる、夢に囚われた本だったように思う。あと参考文献がすごかった。

2021/03/30

ゆう

この本に出会えて幸せだ。ヴンダーヴェルトの種をもらったようだ。内なる宇宙について、やさしく隣で、同じ歩調で語ってくれているようだった。こんなにのめり込むように読んだのは久しぶりだ。この余韻は長く続くだろう。また再読したいと強く思う。

2022/07/31

いやしの本棚

ひと月ほどずっとこの物語の中にいた。ひんやりと体温がない透明な世界。本が読めない時期でも、この本からは遠ざかることがなかったのは、大結晶の引力にゆるやかに繋ぎとめられていたからだろうか。心の底で、ビンゲンのヒルデガルトの音楽が響きつづけている。

2020/12/30

ゆう

理想を求める精神を持つ人間は、なぜ不完全な世界に甘んじなければならないのか。理想主義者たちの間で、心の内のもう一つの世界を観想する方法が伝えられる。世界の中心で光り輝く結晶は完全さの体現か。確かにこんな世界があれば人は救われるし、小説家たちは筆を折るだろう。無機物(鉱物)で溢れた世界は独創的で、宗教で世界が破綻する様も面白かった。「理想主義が内に向かったときには、例えば結晶観想のような超越への志向となったが、それが外へ向かったとき、ファシズムをはじめとする全体主義と独裁をもたらした」(p.320)

2022/12/29

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