マレー素描集
マレー素描集 / 感想・レビュー
M H
シンガポールのマレー人の日常が垣間見える48掌編。装丁がかわいい。外務省のデータでは同国は中華系76%、マレー系15%、宗教は仏教、イスラム教、キリスト教、道教、ヒンズー教。多民族、多宗教国家における生活の葛藤が等身大に綴られる。宗教が関係する分人間関係も複雑だが、あくまで日々の生活のスケッチに徹して淡々としているのに好感。距離感の難しい家族関係など身近に感じられる瞬間もあり、以前よく訳されていたアメリカへの移民文学に通じる気もしてそれだけ普遍的なのかも。
2022/01/04
かもめ通信
シンガポールのマレー系作家アルフィアン・サアットによる48の掌編からなる作品集。わずか1ページ強の短い作品の中にも、ストーリーがあり、驚くほど鮮明に浮かび上がってくるシーンがあることに驚く。それぞれ独立している作品で、連作というわけではないのだが根っこのところでゆるやかにつながっていて、読み進めていくうちに、マレー系の人々が直面する宗教問題、人種問題、その暮らしぶりなどが浮き彫りになっていく。
2021/11/17
くさてる
シンガポール在住のマレー人たちを主人公に語られる、ごく短い物語、掌編、スケッチのようなものが48編収録されています。ひとつひとつはほんとうに短い、そんな物語を続けて読むうちに、シンガポールのこともマレー人のこともほとんど知らないわたしのなかに、少しずつ彼らの姿が模られていくような気分になりました。美しい話も悲しい話も、文化的に分かりにくい話も分かる話も、色々と見つかります。おすすめです。
2022/07/11
のりまき
とても短い物語が続く。誰かの人生のほんの一瞬を覗き見するように読む。この短い一篇の今までとこれからが想像できるような、一瞬でありながらも濃厚な掌編の数々でした。
2021/12/03
まこ
一つ一つの話は短いけれど、その中にシンガポールのマレー系に関する描写が濃い。登場人物個人の話を描いても、宗教や人種の問題が絡んでくる。同じマレー系でも、足を引っ張るのはやめてくれ、家族内でも宗教に対する認識に差がある。シンガポール国内では中華系が増えていき、マレー系はマイノリティと化していく、中華系でないと生きづらくなるけど、日常のふとしたところにマレー系の存在感を出すようなところが。
2021/10/12
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