山中智恵子歌集
山中智恵子歌集 / 感想・レビュー
rinakko
〈バビロンの肝占ひの羊皮紙に心ほろぼすよろこびしるす〉〈さくらばな陽に泡立つを見守(まも)りゐるこの冥き遊星に人と生れて〉〈異境とは誰(た)が異境とぞ急(せ)き問ひて何すれぞここにわれを捨てざる〉〈幻の林のまひる月、日、星、羽のむらさき空に叛くや〉〈権力と音はかかはるはげしかる則天武后に音楽の書ありと〉〈雲入(くもいり)といふ雲雀料理のありしこと料理物語に読むことあはれ〉〈脳(なづき)に薔薇植ゑられてわがさすらふは世紀尽くるもたのしかるらむ〉〈いづくかに玉葱の王ありといふ 廃せられたる王にあらずや〉
2023/02/11
はたえす
一度挫折して、積んでいたが古典和歌をいくつか読み短歌リテラシーもついたしと思って再挑戦した。加えて、いくつか解説みたいなのも読んでみたがもはや意味を追うことなど不要なのかも知れないと思った。代表歌としてあげられる「行きて負ふかなしみぞここ鳥髪に雪ふるさらば明日も降りなむ」からはじまる連作に心ひかれるような歌が多かった。「さくらばな陽に泡立つ目守りゐるこの冥き遊星に人と生れて」「血を水に変へしむかしも渦滝の渦の陽の澄む歓喜なりしか」ただやはり、イメージは浮かぶが、意味を正確に解釈することが難しい。
2023/07/18
月音
神韻縹渺とは、このような作品をいうのだろうか。神話・古典作品から想を得たものが多く、古語がちりばめられた独特の歌風は、難解だが心をとらえて離さない力がある。「私」という存在や日常性が希薄な歌は古代の巫女の託宣のようで、あるいはこの人の魂は神庭に遊ぶ童女なのかもしれないとも思う。夜の静けさに浸されながらゆっくりとページを繰り、いつまでも他界から響いてくる声に耳をすませていた。⇒続
2022/11/05
denden
山中智恵子の歌集、1925年-2006年、「現代の巫女とも評され女流における前衛歌人の代表的存在である(Wikiから)。この人の歌集をどれほどの人が待ち望んでいたか、かく言う私も実に実に待ち望んでいた。そして私が大変失礼ながら神と崇める水原紫苑様の編で読む日が来るとは夢のようである。 とかく難解、と言われる山中智恵子であるが、難解だけではなく来歴やその日常まで、知ろうとするだけで相当難渋する歌人であり、その姿を紹介頂くには短歌界のご仁でなければ無理と思う故、水原紫苑は全くもって相応しい。
2024/10/14
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