世界神秘郷 (ミステリ珍本全集05)
世界神秘郷 (ミステリ珍本全集05) / 感想・レビュー
geshi
戦前に一時期流行った異郷幻想小説。異国の文化や風習を取り込んだ流麗な文章で、本の中に未だ見た事のない世界を幻視させる。イースター島や北極なんて、よくこの時代に取り入れられたものだ。『孤島の瞳人』の瞳人が出てくると気の瑞々しさ、『氷人創生記』の氷に捕われた女の冷厳、『怪船「人魚号」』の人魚への狂気的であるがゆえの耽美、幻想のロマンティシズムが溢れている。モチーフとして繰り返される、異人に魅入られる男と元の世界に留まる女の悲恋に終わる物語に作者の恋愛観がはっきり表れているな。
2016/10/12
ぶうたん
解説で書かれている通り、世界神秘郷以外は読むことすら難しいので出版されただけで高い価値がある。ただし全体的には時代背景を考慮しないと単純に楽しめない作品が多いように思う。当時としては異国の見知らぬ風景だけで一種の幻想性を演出できたのだろうが、今読むとその辺りは相当に弱くなっている。そんなこともあり個人的には一部の作品を除いてやや期待外れで、単行本未収録作品の方が想像力を発揮した作品が多く感じられ楽しめた。大河内常平が後回しになったのは残念だけど、次の橘外男は大好きなので楽しみ。
2014/11/18
Genei-John
まとめて高橋鐡を読むのは初めてだが、橘外男、小栗虫太郎と遜色ない面白さ。ところで本書では小栗蟲太郎と表記されていたが、戦前でも小栗の場合は、虫を蟲と表記するのは誤りだよねぇ。
2014/11/17
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