魔の淵 (ミステリ珍本全集09)
魔の淵 (ミステリ珍本全集09) / 感想・レビュー
シガー&シュガー
表題作ほか二編。メロドラマ風「卍の塔」、痛快小説的「第三の影」、そして表題作「魔の淵」、どれも分かりやすい展開ながら得体の知れない迫力がある作品ばかり。大なり小なり現実が持つ残酷さの切っ先をひらめかせてくるので読後が奇妙に重い。特に表題作の後半、悪役が狂っていく描写はこれまでに読んだ事のない、一体何がこの奇妙な感覚のもとなのかが知れない摩訶不思議な恐ろしさがあった。三橋一夫自身が不思議な人物ではあったようで、おそらく作者の持つ深みと多様さによる味わいだと思うけれど私にとっては忘れがたい恐ろしい世界だった。
2017/11/04
保山ひャン
「魔の淵」「卍の塔」「第三の影」収録。「魔の淵」は、金のことしか頭にない妾が君臨、世間体を気にするスケベ親父、妾仕込みの発狂寸前の息子、精神的虐待に耐える本妻の息子がおりなすロミオとジュリエット。「第三の影」は工員たちが住むめっちゃ治安の悪い場所で暮らす不良少年たちの悪に立ち向かう熱血青年。明朗小説的テンポのよさで読ませる。「卍の塔」は記憶喪失の夫と不倫の末くっついた妻とか。人間関係複雑なこときわまりない。これのみ再読。ミステリー仕立てのメロドラマ3作で、60年前の一般大衆の庶民感覚も知れて楽しい。
2016/01/14
mnagami
探偵小説時代のサスペンスもの。奇妙な感じは短編集よりは少なめ。でもなかなか不思議な味わいがある一冊
2017/03/11
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