過去への旅 チェス奇譚 (ルリユール叢書)
過去への旅 チェス奇譚 (ルリユール叢書) / 感想・レビュー
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本書を世に送り出した幻戯書房とルリユール叢書に敬服。「過去への旅」は緻密で迫りくる文体がありがちな筋を全く異なる色合いに塗り替える。「人と同じことをやって違いを出せれば飽きられない」というプロレスラー・鈴木みのるの発言を思い出した。「チェス奇譚」はスリリングな小説にして貴重な史料。理不尽な逆境で磨かれるのは結果論に過ぎず、程度の問題でもある。大衆は得られたものを賞賛するだけで、引き換えに見えないところで損なわれた何かには無頓着。「戦争を経験して男になれ風潮」に抗ったサリンジャーの香りがしないでもない傑作。
2023/07/03
ケイトKATE
『過去への旅』は、愛し合っていた男女が第一次世界大戦で引き裂かれてしまい、戦後再会するもかつてのような情熱的な愛を持てなくなってしまった様子が描かれている。『チェス奇譚』は、チェスに脅威的な知識を持つB博士の話。B博士は、ゲシュタポに拘束された過去があった。厳しい尋問に追い込まれていたB博士は、偶然ポケットに入っていたチェスの試合の記録本を夢中に読むことで尋問に耐え抜いた。孤独な中で何かに集中できるものを持つことは、生きるために大事であることに気付かされる。2編共、心理描写が深く読みごたえがあった。
2023/09/10
きゃれら
初ツヴァイク。2つの中編小説はどちらも絶品だった。「過去への旅」自分の心の奥底に知らない間に育っていた思慕が弾ける描写は圧倒的。「チェス奇譚」の狂気についての 表現も夢中で読んだ。「3月のライオン」で凡人は狂気への恐怖からどうしても乗り越えられない境界線を、若き天才将棋プロの主人公が軽々と飛び越えるさまが描かれていたのを思い出した。ツヴァイクさん、もっと読まれていいのでは。オススメ。
2021/10/29
星落秋風五丈原
「過去への旅」愛し合いながらも戦争によって引き裂かれる男女。なるほどルコントが映画化したくなるような作品だ。「チェス奇譚」ナボコフの『ディフェンス』を思い出した。
2022/02/28
monado
みすず書房版の『チェスの話』が好きなので、念の為こちらも購入。こちらの訳の方が重厚さがありつつも読みやすく文章がこなれている。注釈があるのも◎。 『過去の旅』もまさにメロドラマ的話ではあるが、二人が通じ合う瞬間の文章がすごすぎて何度も読み返してしまった。
2024/06/13
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