運河の家 人殺し (ルリユール叢書)
運河の家 人殺し (ルリユール叢書) / 感想・レビュー
燃えつきた棒
「運河の家」: 〈硬い小説〉(ロマン・デユール)というだけあって、確かに硬い読み心地だ。 十六歳の痩せぎすな娘エドメは、父母を亡くして、フランドルのおじの家に里子に出される。 このヒロインのエドメというのが、木で鼻をくくったような女で、決して新しい家に馴染もうとはせず、かえって、次第にこの家の主であるフレッドや弟のジェフを手玉に取るようになって行く。 冬枯れたフランドルの野に冷たい雨が降る運河の家の様子は、読んでいるこちらの心まで冷え冷えとしてくる。→
2023/02/18
星落秋風五丈原
【運河の家】ファムファタルっていう割にはラストがあっけなさすぎるのと、色気はどうもなさげな外見。ベルギーはシムノンの故郷らしい。決定的場面を描かないのはシムノンの好みなんですね。【人殺し】は人殺しをしてどうやら完全犯罪になりそうなので大胆になっていく医師。そのままおとなしくしていれば捕まらないのに。メイドさんがストーカーみたく医師に執着されてかわいそう。
2024/05/27
bapaksejahtera
いずれも1930年代の中編小説を力のある有志が発掘し、纏めて刊行した画期的な本。2作とも犯罪がテーマではあるがロマン・デュール(硬い小説)として成功する。「運河の家」はベルギーが舞台で、都会育ちの娘が両親の死でフランドルの田舎の叔父宅に引き取られてから本人を含め家族が陥る崩壊の様を描く。後半の「人殺し」はオランダ。医師の妻が彼の友人である大立者と浮気をする。匿名の垂込みの一年後、彼が二人を殺害してから心理的破綻迄がストーリー。いずれの作とも後年のシムノン作らしい風俗や人物の丁寧な描写が堪能できる力作である
2023/09/08
そのじつ
メグレから読み始めたシムノン、それ以外の作品に触れるのは初めて。「運河の家」の冒頭部分を図書館で立ち読みして気に入り借りた。ベルギーの田舎町が舞台。そこへ喪服を着た少女がやってくる。汽車を降り、バスに乗り換え、雨に濡れながら馬車に乗る。その丹念な情景描写が趣深い。田舎家に馴染むことなく異分子として存在し続ける彼女と、強い磁力で引き合う従兄弟の男子たち。時分の花を鏡の中に見つけ高ぶる自尊心と、無自覚に暴れる渇望を抑える術もつもりも無い少女は彼らの人生を巻き込んでゆく。今回「人殺し」は未読。
2024/01/19
朔ママ
⭐️⭐️⭐️
2022/06/30
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