「戦後」の墓碑銘
「戦後」の墓碑銘 / 感想・レビュー
壱萬参仟縁
否認:認知しているが現実として認めないという心理状態(008頁)。消極的平和主義:戦に強いことを国民的誇りとするのはもう止めようというコンセンサス(072頁)。永続敗戦レジーム:戦後の国体(121頁)。戦後レジームからの脱却の本質:戦後日本は民主主義と平和を表看板としてきたが、実態は敗戦責任を曖昧化して支配者層・権力構造が根本で温存された国家・社会であった事実(133頁)。アベノクラシー:戦後日本が基調としてきた永続敗戦レジームの純化。
2016/06/19
呼戯人
新聞や雑誌に掲載した論文の集成。しかし、傑作である。著者が、永続敗戦レジームと呼ぶ戦後日本の体制は、分かりやすく言ってしまえば、単にアメリカの傀儡政権が政治を担ってきたということである。日本は植民地なのである。だから憲法に違反しようが、主権を侵されようが、人権が無視されようが、アメリカの傀儡である限り何の責任も取らなくてよかったのである。今、これに抵抗しようという勢力はわずかに沖縄の人々のみである。翁長知事は、はっきりと自覚している。つまり沖縄の独立、日本の独立を獲得しようという長い闘いを始めたのである。
2015/10/24
おおにし
白井さんの安倍政権批判はスカッとした読後感が好きですが、1冊の本として読んでいるとだんだん気持ちが重くなってきました。私も安倍政権の進む方向には強い危惧を抱きますが、それでは永続敗戦レジーム脱却できたら日本はどうよくなるのかというイメージが読んでいて伝わってきませんでした。安倍政権に国民がもっとも期待するのが景気対策である現状では、残念ながら白井さんの話に耳を傾ける人は増えないでしょう。
2016/10/31
九曜紋
著者は相当に頭がいい。なので自らが「反知性主義者」とみなす安倍晋三に対して過剰なまでの批判を浴びせる。「安倍政権」ではなく「安倍晋三」個人を、である。それは「批判」では生ぬるく「憎悪」に近い。確かに著者が言うように戦後日本が採った対米追従主義の限界が露呈し、このままでは「米国の戦争」のために日本人が血を流す危険性は高い。しかし政権交替を望んで我々有権者が選んだ民主党政権が国家的危機を招き、そうはさせじと安倍政権を選んだのも我々有権者なのである。著者が吐く罵詈雑言が自分へも向けられているようで正直、戸惑う。
2016/05/08
どら猫さとっち
安倍政権が意味もわからず暴走している昨今、本書は本当にありがたい存在だ。どうしたら“戦後レジーム”から脱却または決別できるのか。何故戦後というしがらみから抜け出せないのか。見事な切り口で分析している。「もはや戦後ではない」という言葉があったが、白井氏の著書を読むと、あれはとんでもない妄言だったと思える。我々は、もう一度あの陰惨な戦争を繰り返そうとするのか。読了後もさらにそう考える。
2015/10/18
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