完本 春の城
完本 春の城 / 感想・レビュー
かふ
読み終わったばかりだから言うけどなんで石牟礼道子はノーベル文学賞取れなかったんだ。『苦海浄土』も凄いけど物語文学として感動的なのはこっちだと思う。町田康も号泣したという。十章だけど八章ぐらいでいつまでも読み続けたいと思った。読み終わるのが残念な小説だった。https://note.com/aoyadokari/n/n70cb7c8f0808
2023/10/07
aloha0307
900頁の大著 史学からは、島原の乱(読後 乱 で括ってしまうことに強い違和感)は、圧政と凶作に耐えかねた農民の一揆、そして宗教弾圧に対するキリシタンの抵抗なのですが、原城(表題:春の城 は掛詞?)をクライマックスとした本書は、魅力的なたくさんの市井の人(とくに優しい女性の感性を)を描いた(戦闘場面が少ないことが迫る哀しみをなおさらに。小川のせせらぎ、土のにおい、どんなものを食べていたかetc 嬉々と筆を進める石牟礼さん(天草ご出身)が眼に浮かぶようです。読み終るのが本当に名残惜しくて仕方ありませんでした
2017/11/26
chanvesa
鈴木重成のことは『西南役伝説』でも触れられていたが、島原の乱の流れの中で登場すると、彼の思いや苦しみが伝わってくる。石牟礼さんの島原の乱への関心が、熊本に近い場所であった出来事のみならず、水俣病との関連であることも伝わってくる作品だ。四郎がヒロイックな存在ではなく、少年として書かれており、鎮圧軍総攻撃の前、食べ物がのどを通らなくなる場面は印象的であった。随所に拷問や圧政の場面が描かれており、読むことをつらくさせる。石牟礼さんの作品の中でも圧倒的なボリュームのみならず、異色な作品であるような気がする。
2022/12/29
シュシュ
島原の乱を描いた春の城と、 取材のための紀行文の草の道が一緒になっている。 春の城は、以前にアニマの鳥という題名で出版された。アニマの鳥を読んだときよりも今回は天草四郎を生き生きと感じた。石牟礼さんは、四郎をカリスマではなく、生身の少年として書きたかったそうだ。年貢米の厳しい取り立てで追いつめられての一揆だが、中には仏教徒もお坊さんもいた。宗教ではなくアニマの一揆だったと思う。マリア観音という言葉が象徴的。マリア様も観音様も慈悲深い。マザーテレサが宗教に関係なく貧しい人々を看取ったことを思い出した。
2018/07/13
algon
江戸幕府家光の世、島原藩の苛政に苦しむ切支丹農民は四郎時貞を大将に頂き一揆を起こす。3万人に及ぶ農民と家族が原(はる)の城に籠もり討伐軍12万の武士に子供を含む全員が殺された。この島原の乱のあらましと籠った城の中で展開された人間模様を著者でなければ著わされ得なかった表現で描きつくされた大作。史実の中に埋もれていった民たちの心映え、追い詰められてなお淡々と続けられた日暮らしの様相。上に立つ者でなく蠢きながら暮らす者たちの振る舞いや哀歓などが胸を衝くがそれらばかりではなく集大成となる視点の大きな傑作と思った。
2023/04/27
感想・レビューをもっと見る