マルグリット・デュラスの食卓
マルグリット・デュラスの食卓 / 感想・レビュー
ケロリーヌ@ベルばら同盟
料理は、孤独な作業だ。それは執筆と同じで、人生もまた然り。しかし、食べものは万人のために作られるが、文章はその限りではない。塩水で調理し、ニョクナムで味を付けた淡水魚と、貨物船の匂いが染み付いた米、メコン川の屋台のスープで育てられた少女は、長じて創造者となり、友人たちのために料理を作る。彼らを愛しているとは言わないし、抱きしめもしない、社交的ではないし、優しくもない、彼女の不器用な愛情表現。狭い台所に詰めかけた人々の美味しい!の声を背中で聞き、密やかに笑みを浮かべて。秘密のノートに綴るレシピ、美味の来歴。
2022/02/07
のんぴ
若い頃、サガンとともにブルジョア階級のアンニュイ感が好きでよく読んだ。と言っても雰囲気を楽しんだことしか覚えていなくて、内容はよく覚えていない。エロスっぽかったかな?レジスタンス活動を通して、フランスの変革、自由の拡大に多大な貢献をしていたとは。本書はパリから40キロ離れたノーフル=ル=シャトーの家の写真や、キュイジーヌのレシピ、添えられたエッセイが、洒落ていて、憧れの女性の一人です。
2023/02/14
くさてる
デュラスの個人的な料理メモ(他人がレシピとして使うようには書かれていない)とインタビューがまとめられた小さな本。その薄さと小ささが、そのまま良質の料理のように思える、滋味あふれる文章がたくさん見つかる本だった。
2022/05/15
ハルト
読了:◎ 料理を愛し、人間というものを愛しているのが、味わいのように伝わってくるレシピとインタビュー集。食事を、共に食べることに意義を見出だしていた彼女らしい、フランス版おふくろの料理のようなレシピたち。自分で作るのはちょっと億劫だけれど、誰かが作ってくれたら、食べてみたい。そんな料理の数々。作る料理は、その来歴を少女時代に持つものもあり、より料理に複雑な思い出の味を持たせる。ここに紹介されているのは、暖かい幸福の象徴のような料理だなと思った。
2022/07/06
きゅー
マルグリット・デュラスの息子による、デュラスのインタビューとレシピを編集した一冊。 彼女の死後出版となるのだが、デュラス作品の編集権を遺贈されていたヤン・アンドレアが本書の編集に異議を唱えて訴訟を起こしたため、2014年のヤンの死まで配本が差し止められていたという。レシピといってもふだん私たちが目にしているようなものではなく、もっと大雑把な、個人的なメモのようなものだ。 ベトナム風オムレツ、中華風サラダ(ニョクマム使用)など、彼女のルーツがベトナム(当時はフランス領だった)にあることを思い出させてくれる。
2022/04/28
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