世界を読み、歌を詠む
世界を読み、歌を詠む / 感想・レビュー
syaori
『旧約』や『源氏』から魯迅やマルケスまで、古今東西の文学を繙いて、そこに投射されている世界と人間の業や「悲しくも愛らしい」愚かさなどを認め、そこから連想される短歌も紹介する随想集。たとえば『ユダヤ戦記』の古代イスラエル滅亡の場面から、太平洋戦争で散った弟子・折口春洋を思う釈超空の歌やベトナム戦争に赴いた開高健の作品が想起され、戦争の虚しさとその中での生に思いを致すといった具合。おかげで作品の余韻も一層深くなるようで、分断してゆく今日の世界のなかでの文芸や歌の力を思う作者の意識も含め、とても素敵な本でした。
2022/08/12
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