殺人者たちの午後
殺人者たちの午後 / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
死刑制度がないイギリス。決して死をもって償われることがない罪人達の声を聴く。どこまでも普通だった彼らは罪の意識から逃れることはできない。一番、読むのを躊躇った「サイコパス」ですが、子供を殺した時から逃れられない哀しみに満ちていると感じた。寧ろ、祖父を殺したのに良心の呵責も理由もなく、自分は人畜無害だということを饒舌に喋り続ける「ノー・プロブレム」は底冷えするような恐ろしさがある。そして罪状が明らかになった際に印象がガラリと変わる「マラソン・マン」には『刑務所の読書クラブ』での「ロリータ」での一節を思い出す
2018/07/25
杜のカラス
殺人者たちにインタヴュー、それも気を遣う。「なんで殺したの。」、「どんな気分ですか。」なんて聴くわけにもいかんだろう。ある程度、協力的な殺人者だろうけど、人の一番痛いところ、面白半分じゃ聴けない。殺人者を異常な人というな考えうや見方では、話は始まらない。一つひとつの話、それなりに了解はできる。自分が、それで殺人をするか、ってことにはならない。それぞれの人次第。いいか悪いかは別として、ちょっと考えさせられるし、考えたくもない内容ではあった。犯罪学、心理学で分析できるようなものでもないだろう、難しい。
2024/06/15
キムチ
沢木氏が長年の宿題としてきた翻訳もの。筆者は巧みなインタビューで知られる英国の作家。当作品は複数の刑余者へインタビューした内容をモノローグの形で分文章化している。沢木氏らしく、ドキュメントタッチで翻訳臭は感じられず、とても読み易い。延々と種々の犯罪者の形を聴かされるとまぁ、なんと身勝手な論理、自己愛の極めつけ・・犯した罪と悔い続ける自分を同じバランスの秤に乗せている。「一度も、決して、絶対、間違っても。。」の語の多用が目立つところに特徴を感じる。Life after lifeが原題。
2014/02/27
まど
原題は「ライフ(終身刑)アフターライフ(人生)」。死刑のないイギリスで終身刑となり仮釈放されたり、服役中だったりする12人の殺人犯へのインタビュー集。殺人を犯した人々が、その後どのように罪を受け止め生きているのか。どの人も苦しみ大変な人生。「とんでもないことが起きてしまった」のフィルが印象的。死刑が一番の厳罰なんだろうかと逡巡します。
2010/08/04
靖
インタビュアーの質問や語りを省き、殺人を犯した人々の話だけで構成される形式は新鮮。取り返しのつかない事は案外簡単におこる得るということの恐ろしさを感じた。また幾人かは反省してはいるがどこかその語りの中に異常を感じさせるのがまた怖い。
2011/07/18
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