終りなき世界: 90年代の論理
終りなき世界: 90年代の論理 / 感想・レビュー
ころこ
岩井がアメリカから帰ってきた折に企画された柄谷との対談です。当時の日米関係に色濃く影響されていますが、日本が最も強いときだったことと天皇の御代替わり直後という絶妙に良くないタイミングで行われたため、中途半端に現実に対応した状況論と、どこかで聞いたような資本主義の問題に終始しています。自信のあるときは、やはり人間は真剣にものを考えない。本書だけでも80年代と、どこか浮ついた傲慢な90年代初めの違いの様なものが分かります。その後のNAMもあり、振り返られない対談です。両者とも「独り言」が良いのかも知れません。
2021/01/16
nobody
世界資本主義の存立(利潤の創出)は外部からの差異収奪に依存しており、その収奪元は商人資本主義における遠隔地貿易から産業資本主義における「内なる遠隔地」へと変じた。マルクスは特別剰余価値の発見までは到達したが外部の発見までは到らなかった。資本主義の解明は岩井克人において完成されており、マルクスの後継者になってほしかったものだが彼はマルキストとならなかった。古典派経済学の成立したイギリスの状況を特殊と捉えそれを資本主義の普遍的モデルとせず、真の普遍的資本主義像を構築すれば日本型資本主義も特殊ではないのである。
2017/03/16
KN
1990年に行われた対談。書名は前年に発表されたフランシス・フクヤマ『歴史の終わり』を意識したもの。大枠でみると近年の議論を先取りしている点がいくつもあり驚かされる。しかしソ連の崩壊が翌年だとは流石に思っていなかったんじゃないだろうか。それに日本が破裂寸前のバブルの上におり、95年をピークに長期停滞~衰退へ向かうことを予感していた節もない。また中国の復活についても否定的な見解を示しており、まさかたったの十数年で米国と世界を二分するまでになるとは夢にも思っていなかっただろう。
2017/11/13
羊男
★★★★
1991/01/20
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