批評王—終わりなき思考のレッスン
批評王—終わりなき思考のレッスン / 感想・レビュー
trazom
批評家の卒業宣言をされた佐々木敦さんのアンソロジー。思想/文芸/映画/音楽/演劇など78編の批評を収録。「批評は、ただそれだけを読んでも面白いものであるべき」という著者の信条の通り、私自身が全く無知な映画や音楽などの分野でも意外に面白く読める。「芸術なんて、あってもなくてもいいものだ」「「音楽に何ができるか」などと問う必要はない」という感覚にも共感する。だからこそ大切なんだと、「有用性の無さの価値」を評価する。その姿勢は、「不要不急」という言葉で大切なものを簡単に切り捨てる昨今の風潮とは対極にある。
2020/10/07
踊る猫
ポップだ、と思う。ツカミを計算し、そこから本題へと持っていく手つきのソツのなさが印象に残ったのだ。音楽・映画・文学……様々な話題を知的に、ほどよく難解に整理しそして結論を提示する。それはしかし、各シーンの見通しがよくなる「概況」を提示しているというよりは佐々木敦という人の「こだわり」を語っているようで、この著者と波長が合うか合わないかでこの本の評価は割れると思う。満遍なく様々な作品に触れているだけあってバランス感覚は優れており、そのアンテナを信頼するかしないかは別としても「批評」の「王」の名は伊達ではない
2021/05/13
ぽち
わたしが佐々木さん(の文章)と出会ったのは90年代半ば頃のことで、ele-kingにはそれほど書いていた印象がないのでおそらくはstudio voice誌が主だったと思うのだけど、もはやその辺の記憶は曖昧で、faderが立ち上がる時には「佐々木さんが雑誌を作る!」と飛びついたことはよく覚えている、その当時からのファンで、fader誌の膨大なディスクレヴューには圧倒されたものだったが、気付けば文芸誌にもその名前を見るようになり、元を辿れば西武セゾン文化の中でシネフィルとして青春を送っていた(
2020/09/13
De PalmaX
著者の長いキャリアの中から選ばれた批評文を厳選した一冊。作品を知らなくても文章そのものが面白い、というのは改めて考えるとすごいことだな…などと思った。批評の対象も批評そのものも不必要と言われればそれまでだが、それでも楽しければいいじゃない!
2022/06/20
chiro
佐々木敦という批評家を知ったのは極く最近だが、この作品を読んでキャリアとジャンルを見たときにどうして知らなかったのかが不思議に思えた。ほぼ同年代ということもあり、時代性でも共感する部分は多く、今後他の著作も読んでみようという気持ちになった。
2021/02/13
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