ドンビー父子 下
ドンビー父子 下 / 感想・レビュー
ケイ
フローレンスの度肝を抜く行動に喝采した。時代を考えれば、なかなかこうはいくまいが、彼女が母と違う人生を歩もうとしたことが素晴らしい。虐げられ、搾取され、苦しい思いをしている人たちを子供の頃から見ていたであろうディケンズが、彼らに可能性を与えたかったのだろうと思えてならない。誰かを切り捨てたままでは幸せにはなれない、幸せは与えられるよりまず与えろという言葉が心に浮かんだ。しかし、ドンビー父子と言うか、これは父娘の話である。訳も非常に読みづらかった。たくさんの人が読めるように新訳を期待する。
2017/03/23
のっち♬
後妻と部下の駆け落ちに激昂したドンビー氏は慰める娘を殴りつけ、彼女もまた家出する。追われる部下や、破産して自暴自棄になるドンビー氏が追い詰められる様は迫真の描写。新時代を象徴する機関車を恐ろしい獣と見立てて描いている点からは、鉄道狂時代の経済パニックを目の当たりにした著者のアンビバレントな心境を窺うことができる。父権支配を問うかのようにヒロインが持ちかける駆け落ち結婚も特筆点、カトル船長の善意溢れるフォローはお伽話的ロマンスに正当性と現実性を与えている。社会像の提示、主題構想と展開で先駆性を見せた重要作。
2018/03/02
NAO
権威主義で自分勝手なドンビー氏の冷酷さとフローレンスの清らかな優しさが、あまりにも対照的だった。ここまで酷薄で諸悪の根源であるドンビー氏が破滅の一歩手前で改心するのは意外な気もするが、実はドンビー氏も世襲制という形に囚われた被害者だったと作者は考えていたのだろうか。父の改心は、何より、辛い日々を耐え抜いたフローレンスへのご褒美だろう。不自然なぐらいの超大団円も、彼女のためなら納得できる。
2015/10/02
有沢翔治@文芸同人誌配布中
あとを継がせるべく、詰め込み教育を行なうも、息子のポールもまた命を落としてしまった。失意の父、ドンビーはイーディスと再婚するが、彼の高慢な性格から妻を愛せないでいた……。
2021/01/11
7ember
現代では、仕事一筋で家族のことが分からない父親って定番の人物類型だけど、ドンビー氏はその早い例なのかもしれない。最初からスーザンが好きだったので、最後まで出てきてくれて嬉しかった。
2023/01/30
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