ニコラス・ニクルビ- 上
ニコラス・ニクルビ- 上 / 感想・レビュー
NAO
【誕生日読書】父親を亡くし一文無しになり伯父を頼ってロンドンにやってきたニコラス一家。上巻では、ニコラスや妹のケイトの苦しい生活ぶりが描かれている。二人が経験する、学校教師、旅芸人一座、お針子、召し使い兼家庭教師、といった仕事は、貧しい若者がつく仕事の代表的な仕事で、ディケンズはそれらの仕事の過酷さをブラックユーモアを交えて描いている。
2020/02/07
のっち♬
父を亡くし、母妹と共にロンドンに出てきた主人公は伯父に職を紹介されるが兄妹ともに苦難に遭う。寄宿学校を主に風刺しており、校長一家をはじめ悪役の造形がコミカルなのがいかにも著者らしい。並行して描かれる妹編も然りで初期特有の活気がある。「僕は少々のことじゃへこたれない。けど人が辛い目にあってると思うと、頭に血が上っちまって、どうして良いやらさっぱりなんだ」—優しくて正義感があり、多才な好青年のニコラスは著者の憧れを体現した随一のヒーローだろう。特に舞台俳優として活躍する場面ではそれがよく出ているように感じる。
2018/01/22
kasim
父を失い世の荒波にもまれる兄妹。ドタバタした印象が強いのは初期作品だから? 今まで読んだディケンズの主人公に比べ、正義感の強いニコラスは意外に気が荒く、女性に対する態度もやや軽くてピカレスクな感じ。ショーネンジゴク学院で酷い目にあったスマイクがニコラスを慕って「せんせえはぼくのお家です(…)どうか、いっしょに連れてってください」と言う場面はさすが、泣ける。因業なのにかすかに姪に心動かされるラルフと、主人を内心軽蔑しニコラス一家に味方する元紳士ニューマンの奇妙な主従コンビも気になる。下巻へ。
2017/12/22
ゆーかり
ディケンズ3作目の長編小説。ヨークシャーの寄宿学校での虐待問題が契機となり実地視察もして書かれたもの。訳に疑問を感じる箇所が多々あるが、唯一の完訳なので日本語で読みたければこれを読まざるを得ない。父親の急逝によりロンドンのおじを頼ることになったニコラスら家族。寄宿学校の場面はそう長くなく、その後旅芸人に加わったり妹が放蕩貴族に言い寄られたりが続いている。もっと印象的でディケンズ的な人物が登場するのは下巻か?しかし「ショーネンジゴク学院」というネーミングもちょっと…(原文Dotheboys Hall)
2015/10/17
Hotspur
ディケンズ3作目の長篇小説。精彩に富んだキャラクターやユーモア溢れる饒舌さ(ニクルビー夫人の発話などちょっと過剰気味だが)などこの作家特有。本質的にはピカレスク・ロマンで、中期以降の作品よりも『トム・ジョーンズ』に近い。プロット展開もやや行き当たりばったりで、個別エピソードも本筋とあまり関係のないものもあるが、各々素晴らしい。特にニコラスが潜り込んだ劇団クラムルズ一座の下りは、その劇団活動の表裏を生きいきと描いて比類なく、シェイクスピアの宮内大臣一座の活動も(ドサ回りとは格違いにせよ)かくやと思わせる。
2021/02/16
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