外は、良寛。
外は、良寛。 / 感想・レビュー
はちてん
タイトルにひかれた。『外は、良寛。』句読点!内ではなく外!著者の意図はなに? 良寛といえば書、というカタチで私の中に存在している。(そもそも僧の書は好きなものが多い)良寛に関する著作は伝記や啓発的なものが多いと思う。その中でやっと出会った著して欲しかった良寛だ。著者の言うフラジャイルから後半の足穗絡みの幼児性に繋がる流れは、他の追随を許さぬ良寛の書の「ゆらぎ」の実像に結するように感じた。 各所で考え手が止まることが多く通読するにも時間がかかったが、まだまだ発見がありそうだ。→
2014/01/13
あかふく
松岡正剛の口述原稿をもとにした本書は最後のところで筆を浮かせて別の線をかき始める。そこで語られるのは「翁童性」だがむしろ「幼児性」に、稲垣足穂などを見ながら寄っていく。良寛についてこれまで述べられてきたことは、そこから見ると言語に対する幼児的な態度のことだったのではないかと思えてくる。音、一、二、三。そしてまた書を「見る」こと。幼児において、文字と絵は変わらない。書を見る、そしてその先の評価には様々な知性的活動があるのだろうけれども、とりあえずのところはこの幼児性に近づいていってみたい。
2013/08/12
tharaud
この本をもとにした田中泯さんの踊りを見て深く感動し、手に取った。講談社文芸文庫から文庫化されているが、羽良多平吉による美しい造本の単行本を図書館で借りて正解だった。ずいぶん身体的、感覚的な面からアプローチした良寛論で、泯さんが踊りたくなったのもなるほどと思う。老境を迎えた良寛を描いた章がこの本の白眉で、四十代でこれを書いた著者にあらためて驚く。年老いたときにもう一度手にしたい本だ。
2022/12/31
猿田康二
松岡正剛氏の著作で共通しているのは、本書でも例外ではないのだが、読者に知的好奇心を刺激しながら、一体この後どうなるんだ、という推理小説的なエンターテイメント性を常に包含させていていつも読んでいて飽きさせないところだ。内容は非常に難しいのだが、書き方がうまいので、すいすい読めてしまう。だからセイゴー氏は書き手として偉大なのだと思う。とにかく読んでいて面白い。一般に言われている有識者の良寛観とは違う見方をされていて、それが良寛の書を見て著者の知識を総動員して解釈しようとして、そこが非常に興味をそそるのである。
2018/05/24
ペッパー
・良寛は妙に時代を読んだようなところがあった。たとえば、江戸幕末の大田垣蓮月や高畠式部のような女流歌人が鋭敏に近代を遠ざけようとした感覚に似ているかもしれません。・子どもが書いたノート。その走り書きを見ていると、むしょうに懐かしさがこみあげてくることがあります。つまり書というのは、人々の「はか」そのものをあからさまにしてしまう“消息 ”という機能をもっているのです。・僕は芸術の真髄は「幼な心」の完成にあると考えています。このことを最初に教唆してくれたのは71歳をこえたころの
2024/09/10
感想・レビューをもっと見る