戦後の先行者たち: 同時代追悼文集
戦後の先行者たち: 同時代追悼文集 / 感想・レビュー
ken
観念的な小説のイメージが強い筆者の人情的な一面が伝わってくる。全ての文章には筆者の友愛と残された者の悲哀とが通奏低音として流れている。人間の晩年はこのような喪失の連続で、その悲しみに耐えつつ自身の死も直視をしなければならない時期なのだ。埴谷もまたそれらの悲しみに耐えるために、友人たちを追想しながらそれらを自己の大切な物語にする必要があったのだろう。特に家族ぐるみで付き合っていた武田泰淳と竹内好に対する文章は一編の小説のような叙情性に溢れている。古本屋で偶然手にした本書は人間存在の悲哀を感じさせる良書だった
2017/01/17
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