エデとウンク―1930年 ベルリンの物語
エデとウンク―1930年 ベルリンの物語 / 感想・レビュー
シュシュ
ナチス政権下で焚書になった本。ベルリンで11歳の少年エデと9歳のジプシーの少女ウンクが友だちになる。ドイツが暗黒の時代になり始める頃だが、子どもの目線で明るめに描かれている。エデの友だちのマックセのお父さん(共産党員)が話してくれた「腐った魚の島」という経済のたとえ話がわかりやすかった。エデのお父さんが失業したのは工場の機械のせいではなく、機械の所有者のせいだと。児童書だけど、労働者のストライキやスト破りなど社会問題も入っていて面白かった。訳者はロマ研究者でジプシーの差別についても詳しく書かれている。
2016/08/04
Cinejazz
ナチスが政権掌握する直前のベルリンを舞台に、ドイツ人少年「エデ」と少数民族ロマ族(所謂ジプシ-)の少女「ウンク」を描いた史実にもとづく児童文学です。 ユダヤ系作家で共産主義者の著者が、当時9歳のウンクとその家族、友人たちと出会い、彼らの話を綴った本書は、ナチスが迫害したジプシ-を友好的に描いたことで、発禁・焚書となり、著者は亡命を余儀なくされます。狂気の嵐が吹き荒ぶ前夜、家族を思いやる少年少女の爽やかな交流の物語をとおして、人種の壁を越えた博愛と人間の尊厳を問いかけられます。
2021/04/25
su-zu
ナチス台頭前、不穏な空気が蔓延しているオーストリア。景気の悪化で突然リストラされた父と家族の窮地を救うためエデは新聞配達のアルバイトを始める。エデを助けるのは、親友のマックセとジプシーの少女ウンク。なぜ真面目な父が職を失わなければならないのか。なぜ僕らは貧乏なのか。なぜウンク達ジプシーは嫌われているのか…?不条理な現実に、3人は子供らしい正義感をもって立ち向かう。実は3人は実在の人物。資本主義の落とし穴や差別の問題を冒険物語にかえて、3人がたくましく生きた姿が生き生きと描かれる。
2016/07/20
AR読書記録
これは、古びない物語ではないのだけれど古びていない物語で、つまり過去のものになっているべきテーマ(労働者vs.資本家・機械化、ロマ、他者への偏見)が、未だに解決されていないことに憂慮する。単にエデとウンクのお話として読むのでなく、これを書いた著者の立ち位置を思い(著者の視線にも自然に、無意識の差別が入り込んでいるあたりも複雑)、さらに詳細に解説されたウンクのその後やロマの状況を考えつつ、記録としての文学のひとつと受けとめざるを得ないなあ。ところでちょっとトニー・ガトリフ監督作品また観たくなった。
2017/05/17
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