クレイジー・コック
クレイジー・コック / 感想・レビュー
azimuth
前半は、よくできた普通の小説だ。各人の如実な描写や自由な比喩が織り込まれており作品としては優れているものの、そこまでの個性は感じない。ところがページが進み、三人の関係が泥沼にはまり、トニーが混乱していくにつれ、書き手の像の輪郭が濃くなっていき、第六章において個性は爆発的に開花する。この最終章を書いたのはたしかに、三年後『北回帰線』を書くことになるヘンリー・ミラーだ、という印象がある。たいして傑作ではなくても、明らかに作家の成長に寄与した作品というのがあるけど、このクレイジーコックもそのうちの一つじゃないか
2011/12/18
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