恋が彼等を連れ去った (幻冬舎文庫 き 3-1)
恋が彼等を連れ去った (幻冬舎文庫 き 3-1) / 感想・レビュー
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【再読】静かな想いがひたひたと迫ってくる。それは記憶かもしれない。感傷かもしれない。思い出かもしれない。誰にでもある過去の扉を銀色夏生は、いとも簡単に開けてしまう。白黒の世界が、鬱蒼とした森のように、そこに存在をしている。気持ちを休めるのも、傷を見つけるのも、過去に止まるのも、読む者が選択をすればいい。どこにでも行けるのだから、小休止するのもありなのだろう。止まるのか、連れ去るのかも決めるのはあなた次第なのだ。
2016/03/17
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【再読】モノクロの世界は、どこか閉ざされていて、過去の隠れた記憶を掘り起こしたような気持ちにさせられる。色は不思議だ。白と黒の世界では、悲哀や感傷や絶望で満たされていたのに、鮮やかな色がつき始めた途端、負の感情が軽くなったような錯覚を起こす。短い言葉と、小さな写真と、恋の欠片と…。何度読んでも銀色さんの言葉に沁みてしまう。あぁ、またどこかに一人で旅をしに行きたい。世界を切り取って、僕も言葉にしたい。そんなことを秋の午後の陽射しを浴びながら思う。
2016/10/12
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よく読んでいるなぁ。読メに登録しているだけでも再読5回目。きっとすでに10回以上読んでいるんだろうな。折に触れて見たくなり、読みたくなり、感じたくなる。回顧して、懐古して、歓喜して、喚起して、古きものと新しきものが入り混じる。銀色さんの詩集は不思議なくらい、その時々で感じ方が違う。何かを求めているから読むというよりも、結果的に求めていたものが見つかる。だから、飽きることなく感動し続けることができるのであろう。脱皮するように古きものを脱ぎ捨てる。次に行くための儀式のような読書なのかもしれない。
2017/04/22
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嵐の後の静けさのように、しんと静まりかえっている。残響もない。残像もない。何もかもが過去のこととなり、いつのまにか、あのときの出来事も、記憶の彼方へと行ってしまった…。忘れようとした訳でもなく、忘れたかった訳でもなく、ただただ時間とともにすべてが霧のようにうっすらと煙っていくのだ。きっと、もう二度と会うことはないのだろう。寂しいけれど仕方がないことだよね。だから、さようなら。振り返ることなく、さようなら。僕の愛しき人よ。僕の愛した時間よ…。
2013/03/16
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【再読】年をとっていくと、恋も劇的な変化を遂げるものだとばかり思っていた。もちろん、安定した気持ちや忍耐力や妥協なんかはできるようになった。でも、それって恋のレベルアップではないような気がする。結局のところ、大人になっても、恋は難しいもので、嫉妬したり落胆したりするものなのだ。もちろん、うれしいこともあるけれど、あの頃の熱情に浮かされたような想いは、そこにはない。一瞬にして世界を消して、二人だけになる魔法も…もう使えないような気がする。
2013/06/07
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