文化亡国論
文化亡国論 / 感想・レビュー
鳩羽
現在がどういう時代なのか、サブカルを通して読み解いていき、その問題に迫ろうとする対談。サブカルが一部の人のものではなく、広く軽く受容されるものになったからこそ、この試みはオタク論ではない現代の文化論として行われたのだろう。右傾化エンタメ云々よりも、それぞれのエンタメのフォロワーにオタクとヤンキーがいて、それらは全く別物でもなく日本的なアニミズムの観点からすると似ていて、空気のような液体のような、定まらないモダニティを持っていて、という流れで捉えた。エンタメはのめり込むとむしろ貧困の的では…とも思う。
2015/06/04
飯田一史
聞きかじりのサブカル知識に基づいた床屋談義がところどころあって鼻白むが、藤田直哉がいろんなデモに参加したり在特会の動画を観て手法を分析している実体験語りはおもしろい。安倍叩きのように二人が同意見に傾いているところより現象学対神経科学とかリバタリアン対市場経済+再配分派(市場不経済あるし自己責任を才能ない弱者に押しつけるのムリ派)といった違いが鮮明な部分の方が有意義。左派は排外主義との戦いに対して結託すべき、という笠井潔の認識には賛同するがそれでネトウヨに対抗する勢力を作れそうにはないなという空しさも感じる
2015/05/25
りょーたに
些細なことだけど270頁に誤植あり。この本のスタンスは、現在的な問題、特にネトウヨや日本の右傾化やワーキングプアなどについて、現在のサブカルから思考、議論を発展させていくというもの。左翼が活発だった時代に生きた笠井さんと、ロスジェネ世代の藤田さんの年代差による見方の違いが刺激的。ページの左側に示される用語の説明的な註が丁寧。『めぞん一刻』の註には思わず笑ってしまった。両者ともにサブカルへの見識が深く広いため頭の固い文化人の議論というイメージはなくポップだ。いや、この感想欄狭すぎない?
2015/04/27
245
今すごいスピードで社会の空気が変わっているのはわかるが、なかなか立ち止まって考えることができていない。この本も連想ゲーム的に事象を捉えていて参考になるのだけれど、自分でもっと考えねば。 インターネットを「集合的無意識」と捉えることに違和感がなく、笠井の「意識的では」という指摘が目新しかった。元は意識的だったとしても、ふわふわと舞う短い文が、似たものが集まりながら醸成されていくイメージがあるから、違和感がないのかも。
2017/07/17
田中峰和
「パシフィック・リム」なる映画の不愉快さを指摘する笠井。日本に上陸した怪物から日本人少女を救出するアメリカ兵。その少女が成長しアメリカのために勇敢に戦う姿は、アメリカに都合のいい日本が自覚的にも無自覚的にも二重化されていて不愉快になるそうだ。ゼロ戦の技術を礼賛する「永遠の0」。実は風防を前も後ろも硝子にし、航続距離を稼ぐため主翼を燃料タンクにした構造はパイロットの安全と生命軽視そのもの。冷静に考えれば矛盾だらけのこの本を400万部も買う日本の読者を憂える2人。右翼嫌い、安倍嫌いには胸の空く面白い対談本。
2015/08/24
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