補陀落: 観音信仰への旅
補陀落: 観音信仰への旅 / 感想・レビュー
佐倉
補陀落渡海についての話は一章まで。基本的にポータラカの主とされる観音についての信仰…それも東アジアにおいて女神やシャーマンと習合した『神』としての…を描く。学術というより文学、現地を旅してのエッセイの趣が多い。補陀落渡海について今後も調べて行きたいが、姥棄や特攻のような悲壮感に溢れた自殺儀式として理解するのではなく、当人からするともっとあっさりして爽やかですらある死の論理が中世にはあったのではないか…という意見は頭に留めておいても良いかもしれない。
2023/01/10
アメヲトコ
2003年刊。表題からはまず補陀落渡海が想起され、実際に本書の冒頭はそこから始まりますが、全体としてのテーマは副題にある観音信仰そのものになります。その語り口は紀行エッセイのようでもあり、宗教民俗学のようでもあり、文芸評論のようでもある不思議なスタイルですが、日本のみならず韓国、台湾、中国へと舞台が拡がり、また仏教のみならず道教、ヒンドゥー教、さらにはキリスト教まで議論が展開する自在さは、堅い論文形式でないからこその面白さです。最後の伏線回収もなかなかに見事。
2024/06/10
カツ
補陀落渡海の話を読みたかったのだがメインは観音信仰の話だった。それでも、台湾の廟でよく見る媽祖やキリスト教のマリヤ様・ヒンズー教のシバ神と観世音菩薩との繋がりなどが分かったりして面白い。千手・千眼・十一面や馬頭などの変化観音はシバ神がルーツだというのも興味深かった。
2020/07/05
T F
補陀落(ふだらく)とは、観音菩薩が住むといわれるポータラカ山が転じたもの。観音信仰は、東アジア一帯に広がる。日本でも坂東、西国、秩父と有名な観音霊場がある。100観音めぐった後は、中国、韓国の観音霊場にも行ってみたい。
2019/10/30
青沼ガラシャ
キリスト教宣教師が書き残した壮絶な集団自殺というべき補陀落渡海の様子が凄まじい。この本自体は観音信仰がメインだが、後半、キリスト教と習合したマリア観音信仰を経て、自力救済を高らかに歌い上げる岡本かの子の「女人われこそ観世音ぼさつ」の詩に至り、冒頭の補陀落渡海にリンクしていく構成が見事。なるほど名著。川村湊さんの本は他にも読んでみたい。
2024/02/11
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