亀岩奇談
亀岩奇談 / 感想・レビュー
MIYA
芥川賞作「豚の報い」と同様、読後の煙に巻かれたような白昼夢感は健在。幻想と現実の間に引かれた線の上をゆらゆらと進むような物語。又吉氏にとって主題は実は"沖縄"ではなく、沖縄という地に息づく"何か"を探しているのだろうと思う。"原風景"という思想には共感を覚える。"どこへ行くのか"ではなく、人は"どこから来たのか"。まだ存在しない未来よりも、存在したにも関わらず忘却され、何の記憶も残さず消え去った過去の方が、人を惑わすのかもしれない。又吉氏の"原風景"である亀岩が、この小説を書かせたのだろうと思う。
2022/10/21
せかいのはじめ
架空の島「赤嶺島」を舞台に軍用地主で働く必要のない青年が、村の自治会長選挙に立候補する、、、という話。本来的な自然破壊反対に目覚める和真だけど、自治会長などという虚職ができるのも、そもそも自然破壊の大元になっている米軍の軍用地料のおかげというねじれ。ただ、短編だから仕方ないけど、実際に沖縄の実情はもっと複雑。ボスや咲子にも、もっとねじれていて根深い事情がでてくるはず。ねじれにねじれた事情が、沖縄の風景なのだろうけど、このサイズの物語では、その香りがわずかに嗅ぎ取れるのみ。
2022/02/10
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