幻島はるかなり
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幻島はるかなり / 感想・レビュー
ホークス
2015年刊。怪奇幻想小説の高名な伝道者による自伝。戦争前後の暗い家庭、殺気立った世の中が印象的。著者はその後、逼塞していた平井呈一を訪ね、ラヴクラフト等の原書を苦心して集める。挫けそうになる中、気鋭の若手として荒俣宏が現れ奮起を促される。ここを起点に様々な怪奇幻想物が刊行された。夢中で読んだ本も、合わなかった本も有る。当時入っていた同人「黒魔団」も出てきて、とても懐かしい。怪奇幻想には、著者の言うように異端の力がある。私の場合、空気になじめない疎外感に抗い生きるには、異端の力が必要だったと今になって思う
2023/12/08
kokada_jnet
紀田順一郎先生、最後の自伝的本とのこと。大伴昌司との交友も実に赤裸々に書いてあり面白く。少年期、推小マニア時代、サラリーマン時代、著作家デビュー時代、幻想文学関係が、詳細に。だが、SFファン時代、古書マニア時代、映画フィルム収集家時代がスルーされているのが残念。この濃度で、生涯全体を描いた、立派な自伝を読みたいものだが。巻末の豪華な十数名の「思い出の人々」で、その残念さが、すこし晴れる。竹内博とそんなに仲がよかったとは。
2015/06/27
パブロ
評論家、翻訳家、小説家…肩書がいくつあるか分からないほど多面的な仕事をしている紀田順一郎。そんな書物の奇人の自伝が面白くないわけがないっ! 紀田少年とミステリとの出会いから大学での推理小説研究会と大伴昌司たちとの交友、文壇から干されていた平井呈一の再評価、荒俣宏の発掘などなど、もう興味深いエピソードが満載。ミステリに開眼してから七十年。この回顧録は戦前、戦後の推理小説、幻想文学がどのように受容されていったかという貴重な記録でもある。「最後の回想録」と著者は言うけれど、もっと細かく分厚い歴史を語ってほしい。
2015/04/24
スターライト
〈世界幻想文学体系〉(国書刊行会)をはじめ、数々の叢書を手掛け、自らも小説を書く紀田順一郎氏による回顧録。副題にあるように、推理・幻想文学に焦点を当て、幼少からの頃から読書に親しみ、やがて推理・幻想文学の森に分け入って、恩師や学友、先輩・後輩との交流を通じて歩んだ道を振り返る。印象に残るのは、やはり大伴昌司と平井呈一だろう。大伴のエキセントリックな性格と天性の才能、平井の複雑な人生にはいろいろと考えさせられるものがあった。
2015/07/17
ふみえ
幻想怪奇文学はあまり読んでないので知らない作家がいっぱいでした。ジャンルは色々だが、こんなにも本を渇望した時代から、今の読まない時代まで、ほんの短い期間じゃないですか。紀田さんの古本屋探偵小説が大好きなので、新作を書いてください。あとがきにある”最後の回顧録“なんて寂しい。
2015/03/09
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