カヴァフィス全詩
カヴァフィス全詩 / 感想・レビュー
ロビン
アイロニーとメランコリーを通奏低音として紡がれるギリシャの詩人、カヴァフィスの詩集。クッツェーの『夷狄を待ちながら』のタイトルがカヴァフィスの詩から取られているということを寡聞にして初めて知った。カヴァフィスの詩においては、歴史、同性愛、哲学という3つの主題が、背教者ユリアヌスやアキレウスなどの歴史上・神話上の人物を通して古代ギリシャ・ローマを舞台に描き出されたり、はたまた若い男性たちの逢瀬を通して現代ギリシャのカフェや街角にて官能的に織り出されている。詩人が勝者より敗北者に共感したというのも興味深い。
2020/06/23
風に吹かれて
「何らためらうことなく/純粋な肉体の純粋な官能を/名誉や評判より大事にする者」(「一八九六年の日々」より、p248)であるギリシャの詩人カヴァフィス。かつての愛しい人を想う詩がいくつかあるけど、共感する。誰にでも、そんな日々はあると思うから。たとえ、想像上の人を想っているとしても。想うだけで官能を感じる…。カヴァフィスは同性愛者、人を想う気持ちに違いはない。→
2021/12/02
Yoko Kakutani 角谷洋子/K
ギリシャの詩人による歴史、神話、哲学、官能をテーマに綴られる内的世界。 ギリシャ、ローマ、ペルシャ、ビザンチンの歴史を題材に硬質な宝石のような高雅な詩が描かれると思ったら、濃密で密やかな肢体が息づく官能の文体も繰り広げられ、危うい均衡が魅力の詩集である。 灰色の偽善的な社会に反発し、官能の衝動を称揚する反骨の姿勢にもっとも共感を覚えた。
2020/01/31
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