ビッグ・サ-の夏: 最後の路上
ビッグ・サ-の夏: 最後の路上 / 感想・レビュー
よしひろ
オンザロードにあった、爆発するようなエネルギーは消えてしまった。老いのせいなのか、酒のせいなのか、疲れと不安に満ちた姿がそこにはある。ただ、そのなかでも、ひとときでもかつてのエネルギーを取り戻すような瞬間があったり、不安のなかでも、満ち足りたものを感じる瞬間があったりする。そして、その瞬間が極めて美しく描かれている。
2014/11/14
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『路上』執筆の大成功から5年、あの伝説的な旅から10年。元来シャイで内省的なケルアックは、人間不信に陥りアルコールに溺れ、「ビートニクの王様」という世間の幻想からは程落い生活を送っていた。本作には、崩壊していく自我をなんとか保ちながら執筆活動を懸命に続けようとするケルアックの苦闘が描かれている。多くの読者は完成された作品から創造力の枯渇した作家の「死」を読み取るかもしれない。だが、広大な自然と都市に挟まれた卑小な自我を見つめながら作家が時に掴みとる、日常に潜む奇跡的瞬間の美しさに、素直な感動を禁じえない。
2013/08/11
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