パウル・ツェラン/ネリー・ザックス往復書簡
パウル・ツェラン/ネリー・ザックス往復書簡 / 感想・レビュー
ロビン
ともに20世紀を代表するユダヤ=ドイツ系の詩人であるツェランとザックスー29歳の年の差で、ザックスが年上であるーの、スウェーデン=パリ間の約16年間に亘る往復書簡。ナチスによるユダヤ人迫害によりツェランは父母を、ザックスは許婚者を亡くしており、戦後も二人は精神を病み、ツェランは投身自殺をしている。ザックスは度々詩を送り、ツェランの苦しみに励ましを送っているが、晩年は癌を患ったり強迫観念に襲われて精神病院に入院したりしている。互いに重いものを抱えながらも、互いを大切な友人として愛情を交わしあう姿に打たれる。
2023/03/28
S.Mori
ユダヤ系の詩人として生きた二人の苦しみがよく伝わってくる本です。ナチスの迫害とユダヤ人差別に心を痛めながら、それでも作品を描き続けたこの二人の生き方には、読んでいて胸が痛くなりました。特にザックスが精神を病んでしまう個所は、痛々しかったです。たとえ暗い時代であっても、自分のことをよく理解している人がいれば、人間は何とか生きていけることが分かります。ザックスの詩が多く収録されており、読みごたえがありました。暗闇の中で一筋の光を求めるような詩が多くて、彼女の作品の素晴らしさの一端に触れることができます。
2019/08/04
いやしの本棚
各々の詩を読んでいて、二人の魂が響きあっていることを感じていただけに、この書簡集については、こんなふうに纏めて、翻訳して、読者の手に届けてくれた人たちに感謝するしかない。書簡では、ザックスのほうが内面の危機について積極的に語り、対するツェランは、自身が深刻な精神的危機にあった時も、ザックスにそれを明かしていない。それでもザックスはツェランにこう呼びかけている。「金色の光がどこからも射さないのでしたら、わたしが心をこめてあなたにそれを送りたい」
2019/08/10
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