鬼火 (ふしぎ文学館)
鬼火 (ふしぎ文学館) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
角川文庫『鬼火』で既読のもの有。『面影草子』は、はんなりとした関西弁で明かされる事件への仄めかしが一番、怖いです。表題作はお銀の悪女ぶりと終盤になって明かされる同性愛的とも言える慟哭が印象深いです。『貝殻館綺譚』、『丹夫人の化粧台』は江戸川乱歩と中井英夫を併せ持ったような妖美が溜まりません。
2013/10/19
つらら@道東民
横溝作品というと露悪的なイメージを持ってましたが、この作品集は耽美で幻想的。同性愛的な愛憎の果てに墓守となった男、夢の中で出会って恋をする恋人たち、美しい恋人の人形を愛でる盲目の美女、、、巨匠は意外とロマンチストだったんですね。
2014/01/15
きょちょ
表題作含む10篇。 横溝正史は、戦前はこの本にあるような、耽美的・眩惑的小説が多く、戦後本格的推理小説に移行するようになったと思う(おおざっぱですが)。 「鬼火」は、作家としての独り立ちを確約させた作品であるらしく、それなりに面白いのだが、竹中英太郎挿絵の衝撃度の方が上回り、その挿絵がこの本に載ってないのが残念。 「面影双紙」が一番面白く、結末の驚きでは「丹夫人の化粧台」。 耽美的な面白さでは「蔵の中」「孔雀屏風」だが、他は失敗しているように感じる。 ★★★
2017/11/21
HANA
もう何度目かわからないくらいの再読。最初読んだときに受けた衝撃は今でも忘れることができない。従兄弟同志の骨肉の争いと三角関係が仮面、底なし沼といった怪奇趣味で彩られる愛憎劇「鬼火」や原稿と現実が虚々実々に絡み合い美少年、肺病、玩具に覗き見と短いながらも耽美主義の頂点に達したような「蔵の中」ひたすら怪奇趣味の「舌」「丹婦人の化粧台」「面」等、どれを読んでも満足させられる。特に「蔵の中」は大正文学の粋を集めたような素晴らしさ。傷ついた顔を隠すマスク等後年の作品を思わせる小道具なども含まれています。
2012/07/11
いちこ@文庫派
初、横溝正史。圧倒的な美への礼賛と、醜い者への厳しい嫌悪の言葉。何とまあ人間の愚かな事!濃すぎて読んでいてクラクラするような世界観でした。私は「孔雀屏風」と「かいやぐら物語」が好きかなぁ。
2013/01/03
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