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悦楽園 (ふしぎ文学館)

悦楽園 (ふしぎ文学館)

悦楽園 (ふしぎ文学館)

作家
皆川博子
出版社
出版芸術社
発売日
1994-09-20
ISBN
9784882930860
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悦楽園 (ふしぎ文学館) / 感想・レビュー

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shizuka

年越し1冊目。狂気と猟奇に満ちた短編集。人間ってここまで心をあらわにして、快楽、悦楽のために突進できるのかと不思議に思う。全てが「むきだし」すぎて、ギラギラと照り返り硝子のように脆くなっている。そんな中、『疫病船』は良かった。コレラ船に成り果ててしまった引き揚げ船に父親が乗船している。夢にまで見た父親との再会、でもコレラ患者をみすみす陸にあげることは世間的に許されない。愛と憎しみの間にゆらぎながら父親へ投石する。その記憶がある母娘を狂わせる。『獣舎のスキャット』は自業自得の結句だけれど、恐ろしくエグい!

2017/01/05

mii22.

人の心の奥に潜む悪意と狂気と残酷に満ちた短篇集です。ご本人が文庫化の時、あまりに不健康かなと思って他の作とさしかえたとおっしゃる「獣舎のスキャット」「蜜の犬」には衝撃を受けましたが「蜜の犬」のラストはかなり好みです。美しい毒は少なめで息が苦しくなるような嫌な毒が多かったです。

2015/02/25

藤月はな(灯れ松明の火)

「獣舎のスキャット」は謙虚を装いながらその傲慢さが透けている雌豚へ待ち受ける結末に思わず、「反聖域」の生きているか死んでいるか分からない久子の愚鈍なまでに純朴な麻子に対する嫌悪感と憎悪を抱く理由に琴線に触れました。「悦楽園」の最後はロボトミー手術を暗示しているのだろうか?やっぱり、第一印象が強かった「紅い弔旗」と「蜜の犬」が好きです。

2012/11/07

つらら@道東民

皆川祭り7。噂に名高い『獣舎のスキャット』、ラスト3行に鳥肌です。姉の無惨で淫靡なラストが、死の世界を連想させられ圧巻でした。『蜜の犬』最後の歪な狂気なのになぜだか透明な美しさを感じます。山岸凉子の「ハーピー」(漫画です)の狂気を思い出しました。この作品集は皆川作品の中でもすば抜けて、狂気と残酷性を感じさせます。昨今のイヤミスなんて、子供の遊びにしか感じられなくなってしまった。

2013/11/11

安南

著者自ら「あまりに不健康すぎる」と自粛していたという『獣舎のスキャット』姉弟の背徳的な物語を期待したら…『蜜の犬』『悦楽園』と共に獣臭耐え難く、まいりました。全編が黒グロとしたタールのような感触。作品によってはフェミニン過ぎるところが、小池真理子的耽美世界のようでもあり…露悪的な性的描写にはATG映画をイメージしてしまう。それでも、お目当ての『疫病船』、戦争の爪痕がこんなところにも。極限状態におかれた人々の恐ろしさ、引き揚げ船の荒廃していく描写の凄まじさ。これだけでも充分満足できる傑作。素晴らしい。

2013/06/17

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