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皆川博子コレクション2夏至祭の果て (皆川博子コレクション (2))

皆川博子コレクション2夏至祭の果て (皆川博子コレクション (2))

皆川博子コレクション2夏至祭の果て (皆川博子コレクション (2))

作家
皆川博子
日下三蔵
出版社
出版芸術社
発売日
2013-05-21
ISBN
9784882934417
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皆川博子コレクション2夏至祭の果て (皆川博子コレクション (2)) / 感想・レビュー

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文庫フリーク@灯れ松明の火

柱傾き屋根朽ち果て、弥陀尊像も失せた御社。返り血でぬめる乱れた衣服、掌中には奪った金包み。月光の下、川の流れに血刀洗う非道な男に降りかかる淡雪のような光。ふいに現れた六、七つの女童「いいえ雪ではござんせぬ。ここは名におう螢沢」深夜の河原「ほう、ほう、螢こよ」と歌う女童。七年前、私が一生尽くすゆえ、と暮らした夜鷹の女。三途の川の渡しも近い螢沢で男を待ち受けていたのは、非道な悪事を止めてくれと縋りつき、お腹の子ごと殺された女と、生まれていれば七つの女童。三途の渡しへいざなう女を、袈裟がけに斬り裂く悪党の刃→

2013/10/27

ケロリーヌ@ベルばら同盟

『夏至祭の果て』キリシタン大名有馬晴信に仕える武将を父に持つミゲル内藤市之助は、学友の骨片を握り締め、追放船に乗った。決心を胸に秘めて。極東の島国にもたらされた西欧の文化と宗教。武器弾薬の供与と引き換えに殿様が帰依した天主教の学堂セミナリヨで、人の上に君臨する大いなる存在への陶酔と疑義に柔らかな魂を引き裂かれた若者の彷徨。餓えるように追い求め、見失い、手放そうと心を定めても、亡き兄の、学友の、幼子の面影が彼を険阻で苦悩に満ちる場へ引き戻す。信仰の光と闇を一人の若者の生き様に凝縮させた息苦しい程重厚な作品。

2022/11/02

藤月はな(灯れ松明の火)

最後に収録された三篇以外は既読。清流のような登場人物たちの言葉から立ち上るのは人が人を想うことへの業と背徳と甘美な痛みに満ちた情。「死の泉」のようにラストの附記でがらりと今までの様子が慄くほど変貌する「棒」に驚き、気高き魂は人の優越によって墜ち狂うだろう、しかし、手足は喪えどもその魂は死なず、継がれる奇跡を描いた「冰蝶」が特に好きです。秘密と愛すべき女のために女形から自ら苦界へ身を落とすという事実と晴れやかな様の対比が清々しい「花道」も素敵でした。

2013/07/17

mii22.

江戸から明治の初期辺りが舞台となる作品集。直木賞候補になった表題作「夏至祭の果て」は重厚で濃密な物語。キリシタンとして育てられながら、キリシタンであることを拒否し、しかし、キリシタンを憎み弾圧する者でもない市之助。彼に激しく感情移入し、自分に正直でありたい、どちら側にもつくことができず苦悩する姿に息苦しくなりました。短篇のなかでは、幻想的な「冰蝶」美しく哀しいラストの「花道」が印象的。そして「清元螢沢」にうっとり...。

2015/05/29

ぐうぐう

短篇の数々も印象に残るものばかりだが、なんといっても表題作の長篇だろう。帯の惹句で篠田節子が「1976年第76回直木賞、栄光の落選作。選考委員の器を完全に凌駕していた」と書いているのを見て、さすがにリップサービスだろうと思いながら読み進めていくと、なんのなんの、どうしてこんな傑作が落とされたのかと、唖然としてしまうおもしろさだ。兄を殺したキリシタンの戒律を憎むあまり、あえて敵であるキリシタンに身を置く主人公。しかし、棄教してなお、そこに答えがないことの底なし沼。(つづく)

2013/11/01

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