皆川博子コレクション4変相能楽集
皆川博子コレクション4変相能楽集 / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
顔がない人形、五郎を媒介に推理を展開させる顔師、連太郎の人の業と知らぬに悪意に加担していた人間のほろ苦さを描く事件簿は小畑健氏が描いた『あやかし左近』の元ネタなのかしら?ラストの連太郎と五郎の会話が切ないです。やっぱり、何度読んでも生れ落ちなかった子供(峰)と亡霊(彼)と生者(女)の会話が掏り合わさって解けてゆく、綾取りのような「幽れ窓」が好きです。
2013/12/21
ぐうぐう
長篇二作と短篇四作を収録した『皆川博子コレクション』第4巻。連作ミステリ『顔師・連太郎と五つの謎』は、シリーズ化されなかったのが残念に思えるほどに魅力的な設定。連太郎の内奥の声を発する顔のない人形・五郎が、実に控えめに配置されている辺りが憎い。三島の『近代能楽集』を彷彿とさせる『変相能楽集』では、能楽というベースはありながらも、驚くほど自由な発想とスタイルで読者を煙に巻く。まさしく変幻自在、めくるめく妖しさに翻弄されるのだ。短篇では「メリーゴーラウンド」が印象的。
2014/08/11
吉野ヶ里
舞台映えしそうな作品が多かった。『顔師・連太郎と五つの謎』人形の五郎がインパクト強め。「笛を吹く墓鬼」の雰囲気がとても好きでした。『変相能楽集』下敷きになっている能の教養がないため、飲み込みきれなかった作品も多い。「幽れ窓」はとても良い。三人がそれぞれ微妙に噛み合ったり、噛み合わなかったりしながら、自分の話をする構図。とても舞台に映えそう。世界観設定も古びたホテルという舞台装置も全部好き。「禱る指」ねっとりとしている。夫婦の心が離れた後の家って地獄よね。独りの時間のために祈る気持ち、わからなくもない。
2020/08/24
秋良
今ではすっかり取り澄ました顔をしている丸の内の裏側に、あの廃墟のホテルがあって彼が今も姉を待っていたら。そんな気持ちになる「幽れ窓」が一番好き。
2017/05/28
rinakko
うとりうとり…素晴らしい。とりわけ表題の連作5篇には、ただもう酩酊して溜息ばかりだ。好みだったのは「景清」や「幽れ窓」。「青裳」もよかった。「冬の宴」については、『幻妖』の作品解説が必読とのこと。いずれそちらで読み返したい。
2013/11/07
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