皆川博子コレクション6鶴屋南北冥府巡
皆川博子コレクション6鶴屋南北冥府巡 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
珍しい皆川博子の時代小説。主人公は四世鶴屋南北(勝俵蔵)。もっとも物語の大半は、まだ伊之助であった彼の無名時代。寛政から文政時代の江戸社会が活写される。文体も江戸風である。ことにプロローグたる『彩入御伽草子』などは、歌舞伎の台本を思わせる書きぶり。希代の名役者でありながら、不遇をかこつ尾上松助。なかなか立作者になれない伊之助。最後は彼らの仕掛けたケレンの大技が江戸の町を席捲する。ようやく時代が彼らに追いついたのだ。題して『天竺徳兵衛韓噺』。歌舞伎から如実に江戸が見える小説。面白い。
2024/03/26
藤月はな(灯れ松明の火)
『二人阿国』は私の中の「女」を呼び起こさせるような作品でした。「三郎佐の女になるんだから誰とも寝たくない」と言ったお丹を「見損なった」と打擲するお国の気持ちが分かります。誰よりも無垢で純真故に誇りを持って選択していた思っていた者が実は打算で選択していたと思ったら私も「この売女!」と怒り狂って殴り掛かっていると思います。大衆に媚びた「お上品」な三郎佐の舞台に身を寄せたお丹と塵のように瞬く間に使い古される目新しさにある一瞬の普遍を舞うお国の対比が艶やか。そしてお国の最期が生への苦悶から菩薩になった場面が印象的
2014/09/28
ぐうぐう
『皆川博子コレクション』第二期は、文庫本未収録というコンセプトはそのままに、時代ものを中心に編まれている。第二期最初の巻である本書は、『鶴屋南北冥府巡』と『二人阿国』の長編二本、舞踏劇の台本「泉の姫」を含む短編三本、そしてエッセイという構成。『鶴屋南北冥府巡』は、その冒頭からして心を鷲掴みにされる。魅惑的で緊張感に満ち、ゾワゾワとさせる、こんな導入部を読まされたら、たまったもんじゃない。さらに驚くのが、鷲掴みにした心を、そのままエンディングまで片時も離さずに一気に引き摺り込んでいくってことだ。(つづく)
2015/09/22
秋良
人情なんて甘ったるいものじゃない、毒々しくて、濃くて、嵐のような執念をもっていなければ生き抜くことが出来ない江戸の芸の世界の激しさが楽しい。生き馬の目を抜くってやつですね…。エッセイに「家事する時も片手が本で塞がってて手抜きになった」って書いてあって、活字中毒ハンパ無いと思った。
2017/09/09
rinakko
「二人阿国」は既読だったので、今回は表題作と短篇、エッセイを堪能した。
2014/08/12
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