異次元を覗く家 (ナイトランド叢書)
異次元を覗く家 (ナイトランド叢書) / 感想・レビュー
HANA
コズミック・ホラーの個人的な定義として主人公が怪異に対して無力な事や恐怖の根源に人智が及ばない事があると思うのだけど、そういう意味では本作は紛れもなくH・P・Lの先駆であった。手記の主は誰なのか。何故その家が怪異に襲われるのか。という説明は一切なくただ起こる怪異が記されるのみ。その怪異も最初のうちは奇怪なものの襲撃とかだが、後半ほとんどは宇宙を巡るイメージの奔流になり、ただその記述に圧倒されっぱなしになる。ホラーというより宇宙を巡る散文詩のように感じられた。あと、あのラストはH・P・Lの某作品っぽいなあ。
2018/02/17
ヨコツ
前半は得体の知れない生き物との戦いを描いたサバイバルアクションものとして楽しく読んでいたのだけれど、中盤から宇宙の真理に人間の意識が挑戦してゆくという哲学SFの様な超展開に。そして後半はまたホジスンの好きそうな怪奇モノへと、様々な要素をひとつの物語の中に無理やり叩き込んだような闇鍋系小説が本書。しかし面白さで言えば現行のナイトランド叢書の中では個人的にNo.1の称号を贈りたい。後書きの訳者のハヤカワSF版からの苦労話も面白かった。
2015/11/03
Kouro-hou
40年も前に出たハヤカワ版を読んだ時、何でホジスンはこんな話が書けたんだろう?と思った事を覚えてます。近い時代に同じような経歴から作家になったメルヴィルやヘミングウェイと違いすぎないか?ラヴクラフトより先に世界の終わりと太陽系の終末、さらにスターシャ風の宇宙美女との純愛、何故か豚人間との篭城戦と犬萌えwを一つに押し込んだ、木に竹どころか土管を接いだような話がなぜ書ける?冥王星が発見される20年も前なのに! 新装版は訳の荒俣宏の解説がさらに追加され、野心に燃えた若い頃を思い返す荒俣先生が微笑ましかったりも。
2015/11/09
かわうそ
繋がりそうもない素材を無理矢理繋ぎ合わせて異様に壮大なイメージの奔流で装飾したような全体としてはなんじゃこりゃと思わざるを得ない怪作。翻訳に問題がありそうな箇所が散見されるのは残念ですが変な本好きなら一読の価値はあるかと。
2015/12/23
きゅー
表紙には「ラヴクラフトの先駆をなす宇宙的恐怖」と書かれている。手記形式、説明されることのない異次元体験、クリーチャーによる襲撃とたしかにラヴクラフト的要素が濃い。 しかし、ラヴクラフトが異次元の“恐怖”を描くとするなら、本作は異次元の“驚異”に主眼が置かれているようだ。様々な怪奇現象が起きるがそれらの連関が提示されず、謎が謎のまま終焉するという力任せな物語ではある。1908年に書かれたという本書は荒書きではあるが、刺々しいまでのパワーが全体に漲っているのが分かる。
2017/10/31
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