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死ぬまでに行きたい海

死ぬまでに行きたい海

死ぬまでに行きたい海

作家
岸本佐知子
出版社
スイッチパブリッシング
発売日
2020-12-01
ISBN
9784884185435
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死ぬまでに行きたい海 / 感想・レビュー

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kaoru

翻訳家岸本佐知子さんのエッセイ集。軽い気持ちで手に取ったが惹き込まれた。赤坂見附でのバブル期の会社員時代や上智大のキャンパスライフの描写には、東京という都市の持つある種の空虚さを感じる。父の故郷丹波篠山や上海旅行の思い出は鮮やかだが、「過ぎ去ったこと」への静かな哀しさが文章に滲み出ている。富士山や大室山への思い入れ、何ともおかしな幼稚園時代。初台に住んでいた時の危うい精神状態。『バリ島』にはオカルト的な不思議さも漂い、全体のトーンにどことなく彼女の訳書『掃除婦のための手引書』に通じるものを感じた。

2021/05/11

どんぐり

生まれてからいままで住んでいた街や、学校、会社のあった場所などを訪れ、その想い出から記憶をたどり、現在に重ね合わせる翻訳家のエッセイである。最初は、著者が会社勤めをしていた頃の「赤坂見附」。次いで、ボート小屋を背景に写っている少女のいた「多摩川」、通学で乗り降りした「四ツ谷」。ほかに全国でも珍しいアルファベット表記の「YRP野比」駅や、船のデッキにいるような「海芝浦」駅も出てくる。多くは東京とその周辺だが、その土地のことを知らなくても読むのに支障はない。→

2021/03/15

これは面白かった。岸本さんの記憶の欠片を岸本さんの足で見てまわるエッセイ集。岸本さんという人がどういう人かも知らないまま読み始め、出てくる場所も何もかも知らないものばかりでこれは私が読んで大丈夫かと不安に思うのも束の間。暢気な文章に肩肘張らずにくつろいで、ふとした比喩や表現に心を奪われる。懐かしかったり寂しかったり、岸本さんの目や心で見る世界はなんだかとても愛おしかった。記憶と今が混ざり合い、読む者の過去まで溶かされる。これまでの人生、無造作に転がる埃被った記憶の欠片を、丁寧に洗い出させる稀有な本だった。

2021/05/23

kei-zu

日常のトホホと妄想が交錯するキシモト・ワールド。今回は、出不精な著者が腰をあげてのエッセイで、著者自身によるスナップ写真もいつもと雰囲気が違います。 と思いきやのコロナ渦。やがて旅先は記憶の中のものとなって、現実と記憶と妄想も(より一層)曖昧になるような。 著者のエッセイを長く読んでいる読者としては、あの話し出てきた!あの場所はここだったんだ!と、キシモト・ワールドが広がる楽しさも感じられます。

2021/01/07

アキ

年を重ねると昔通った学校の周囲とか行きたくなるのは、岸本さんでもそうなのですね。超がつく程の出不精なのに、雑誌「MONKEY」でどこかへ行って見たままを書きたいですと自分の口が勝手に言ったことから始まった連載。お上品な中学・高校・大学の周囲は学生の頃見る視線と大人になってから見る視線が交錯しないのか、数十年経って街が変わったのか覚えているのは記憶なのか空想なのか。ルシア・ベルリン「掃除婦のための手引書」のような乾いた文章の風味が味わえるエッセイ集でした。ところで死ぬまでに行きたい海ってどこだったのですか?

2021/02/25

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