フングス・マギクス: 精選きのこ文学渉猟
フングス・マギクス: 精選きのこ文学渉猟 / 感想・レビュー
アナーキー靴下
古今東西、文学に登場するきのこを取り上げた本。抑制的で品がありながら深奥に愛を秘めた、まさに評論家然とした、色気のある筆致にクラクラする。私がオタクやフェチ等、偏愛対象への語りに惹かれるのは、あたかも万民に知識を披露するようでありながら、自身を超える愛を持つ者などこの世に存在するものか、という誇りを滲ませる、それが好きなんだな、なんてことを悟らされるほど強烈な本である。ましてやきのこ、死とエロスの香気漂わせ、食欲まで刺激する、完全である。本書を読めば、著者同様きのこの胞子が頭の中に入り込んでしまうだろう。
2023/06/15
帽子を編みます
きのこ文学です。著者は真面目に宣言します。「文学はきのこである。あるいは、きのこは文学である。」はっ、何をと苦笑している方、この本を読むとじわじわ侵食されて、「うーん、そうかも、いやいや、そんなこと」の領域に立つ可能性があります。読む時点できのこ愛好家の私は「きのこのお導き」を感じました。この本を読んでいるときに、あの作者が…、はっ、読友さんも…、な出来事が続くのです。「考えるな、感じろ」、それがきのこなのです。著者はあとがきで決定版『きのこ文学大全日本文学篇』をまとめたいと述べています、はい!読みます。
2021/06/29
taku
きのこ。この面妖で面白い素材を文学者たちが放っておくわけがない。ルイス・キャロルのアリスは有名だと思うが、日本のきのこ文学において泉鏡花と宮沢賢治が重要な存在だったとは。文学や映画では毒や寄生によるホラーとミステリー、あるいは両性的容姿からエロティシズム、または神秘性に着目した作品を紹介している。人が採り、食べ、様々な着想を得てきたことを、きのこの森を歩くように教えてくれる。著者に刺激され、きのこ愛を謳う。きのこは愛であり、愛はきのこである。極彩色の夢を見せてくれるきのこに出会いたい。
2023/10/21
rinakko
すこぶる面白かった。茸尽くしで大満足だ。そも“きのこ文学”とは何ぞ…というとば口から、森の奥深く踏み入るが如くに、茸という視点から文学を見つめ直す驚きのエッセイである。まず、文学者にインスピレーションを与える要素として、茸の中間性、魔術性、遇有性、多様性が挙げられ、各々の観点に沿って古今東西の文学が取り上げられる。『不思議の国のアリス』、イテリメン族の神話、『田紳有楽』…。あっ!と思わず声を上げたのは、ソローキンの『ロマン』。印象的だった場面に触れているので、言われてみれば…と、がくがく頷きまくったことよ
2012/12/07
圓子
著者のきのこ愛が、これでもか!これでもか!と伝わってくる本。熱い。愛が先走りすぎて、内容は少々強引すぎるところもあり、「おいちょっと、その結論どっから出てきた?」と苦笑いしながら何度もつっこみを入れた。それこそ【きのこ的】なのかもしれない。読みたい本が増える危険なタイプの本でもあった。わたしの頭の中にも、もうすでに菌糸が広がっている。ああなんというフェアリーリング。
2020/06/03
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