蝿の乳しぼり
蝿の乳しぼり / 感想・レビュー
たみ
再読。同著者の[空飛ぶ木]はおとぎ話の詰め合わせのような雰囲気でしたが、こちらの[蠅の乳しぼり]は自伝的風、連作短編集で「ぼく」が主人公。舞台はダマスカス。若い「ぼく」には年老いた親友のサリムじいさんという人がいて、この人がまた渋い良い味。友達の話、恋、金もうけ、宗教、新政権をグチる話など。[空飛ぶ木]よりも内容はバキッと大人向けだけど、やっぱり柔らかな雰囲気で読みやすい。子どもの喧嘩には口を出さない親たち、近所の連中が喧嘩をしていても知らんぷりするけど余程の時は飛び出して止める、それが当たり前の人たち。
2015/07/11
やまはるか
16才の少年が語る13の物語。舞台はシリアのダマスカス、アレッポなども登場し、物語に描かれる町並みの向こうに爆撃で破壊尽くされた現在のシリアの映像が悪夢のように浮かぶ。裕福な夫人の家に上がり込んだ鶏売りの少年が、主人が帰ってきたために箪笥の中に隠れると、先に隠れていた男がいて、大声を出すと脅して男に鶏を高値で売りつけて安く買い戻すことを繰り返し7リラの鶏で75リラをせしめたというようなアラビア的な物語も。表題の「蠅の乳しぼり」は頭がおかしいふりをして兵役を逃れるため検査で名乗ることにした主人公の職業。
2021/01/28
relaxopenenjoy
シャミ3冊目。ダマスカスが舞台のパン屋息子が主人公の自伝的短編集。「片手いっぱいの星」が日記だったがこちらは短編13編。寓話あり、ユーモアや毒、ロマンス(?)もあり、なかなかおもしろい。サリムじいさんも健在。ケバブ屋の話、炎の手、木の実、我が友ヌー あたりが特に印象に残った。味のあるイラストは、「空飛ぶ木」同様、奥様のRoot Leebによる。挿画も各編に1ページずつ。あちらより掲載多いが、モノクロなのは残念でカラーで見たい感じ。
2022/07/21
ぱせり
作者の帰れない故郷の町ダマスカスとは、帰れない少年時代と同義語でもあるように思う。郷愁の光であると同時に、現在ひたすらに子ども時代を過ごしている者たちへの眼差しの明るさ、温かさであると感じている。そこに外から影を投げかけようとする手に対しては、静かで激しい怒りをあらわす。鋭い皮肉という武器を使って。
2023/07/13
piro5
不思議な語り。。
2015/03/21
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