アクアリウムの夜 (ロサ・ミスティカ叢書)
アクアリウムの夜 (ロサ・ミスティカ叢書) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
ずっと気になっていた青春ホラー。角川スニーカー文庫で復刊された時、篠田真由美さんが絶賛していました。カメラオブスキュラで見た水族館の地下に続く階段の存在、白蛇様を信仰する新興宗教、コックリさん、ラジオから届く金星人からのメッセージ、そして・・・・。時々、覗く人々の思考の堂々巡りが静かな狂気性を垣間見せてより一層、恐ろしい。特に高橋が金星人からのメッセージとして何も書かれていないメモを一気に読み上げる場面は吐き気がするほどの怖かったです。読み終わった後に表紙と本体を見ると思わず、放り投げたくなるほど、怖い。
2014/08/21
へくとぱすかる
文庫で既読。FMラジオの放送で省略・脚色された場面が、原作としての味わいで楽しめる。文庫のように解説がなく、終わってすぐ奥付となることで、突然の終わりを納得させられる。昭和的オカルト要素が散りばめられ、夏のこの時期にふさわしい恐怖は抜群。作者による最近の文章によると脱稿は1986年。もちろんラノベ以前の時代。「少年小説に偽装した」とのことだが、それでは作者は何を目指していたのだろうか。単なるホラーでもないとすると?
2016/08/23
hnzwd
見せ物小屋から始まり、こっくりさんやラジオのホワイトノイズから聴こえる声等々、色々な要素を盛り込んでいく、、ホラー小説でしょうかねえ。文体は読みやすく、主人公達の高校生活の悩みなんかを感じ取れそうな気もするんですが、後ろに流れる嫌な感じがずっと付き纏っているような。着地点だって、答えかと言われれば全くスッキリはできないですし、妄言だ、と切り捨てることだって。はっきりしない恐怖、狂気を読みやすい文章で書くとこうなるのだ、という作品か。
2022/06/23
ヨコツ
こんな青春を過ごしたかったラノベNo.1として、「ちょっと人に紹介するのは憚られるよな。だって僕硬派な読書してると思われたいタイプだし」と心の中に封印していた本だったのだけれど、その筋では幻想文学の金字塔だと謳われる程の作品だということで人に読ませるためにもカッコいい装丁版を手に入れてみた。ほの暗く、クトゥルフ神話を思わせる生臭さと狂気に彩られた青春物語は今読んでも胸が熱くなる展開で、僕の中での分類はやっぱりとみなが貴和の『夏休みは命がけ』あたりとともに夏に読みたいラノベとして永久に輝き続けるのだ。
2015/01/19
くさてる
その作家の生涯で残された小説がこの一作であっても悔いはないと思わされるような作品が世の中には存在する。この著者にとってはこれが唯一の作ではないのだけど、読んでいてずっとそんな思いが頭から離れなかった。瑞々しい思春期の感性と本当の意味でおぞましく忌まわしい「この世あらざるもの」が絡みあい、溶けあい、ひとつ迷宮のようなぎりぎりのバランスで成り立つ世界を作り上げている。そんな奇蹟のような作品が量産されることなどあり得ないのだ。美しい、作品でした。
2015/02/13
感想・レビューをもっと見る