サイボーグ・フェミニズム 増補版
サイボーグ・フェミニズム 増補版 / 感想・レビュー
ハチアカデミー
SF小説の傑作『ニューロマンサー』と同時期に発表された、フェミニズムとサイバネティクスが手を結ぶダナ・ハラウェイの「サイボーグ宣言」所収。「機械と生物のハイブリッド」が、これまでの人間/動物という境界や性差の問題を乗り越え、新しい世界観・価値観を生みだす、というアジテーショナルな宣言。「サイボーグ」の問題は、起源神話を破壊する。歴史も文化も人工的な構築物に過ぎず、「科学も自然もすべて言語効果を免れては成り立たない」。その認識が固定化されているかに見える差別を打ち消す。その先に何があるのかを考えさせられる。
2015/01/21
しゅん
フェミニズムから語られるハラウェイ『サイボーグ宣言』、それに対する黒人ゲイ男性SF作家ディレイニーからの反論と応答『サイボーグ・フェニミズム』、アン・マキャフリイ『歌う船』の宇宙船に頭脳を付けられた主人公がなぜ「女性」として扱われるのかと疑問を呈した性転換女性作家ジェシカ・アマンダ・サーモンスンの論考『なぜジェンダーを呼び戻すのか?』。三つの論考を並べつつ、自身の補論とハラウェイとの対談を載せる巽孝之の編集が面白い。全体の趣旨をまとめられないが、ディレイニーが『ターミネーター』を論じている箇所がよい。
2023/12/06
Ecriture
機械と人間の融合したおぞましきサイボーグに、一神教の原初の起源つきの女性像や父権主義の求める女性像からの解放を見出す。この点ではグラマトロジーに負うものが多い。シリコンバレーでの工業の発展と女性の労働環境の変化に女性の系譜学を読み込み、機械・文化と人は常にアーティファクチュアル(デリダ)に結ばれてきたことを示す。マルクス主義やフェミニズム諸派が単一のユートピアの押し付け合戦になっていたところを調整していくところはラクラウ・ムフの仕事と共通している。神が死んだ後、ようやく女神も後を追って死んでくれた。
2014/03/16
noharra
かなり感心した。30年経っても古びていない。女性のホームワーク、アジア系女性のサイボーグ化とかも端的な例がこれから現れるかもしれない。 ポストモダン・ラディカリズムはまあべつに敗北してはいないのだ。
2018/12/20
MKSzk
眼鏡は顔の一部でGoogleは知能の一部という21世紀人からしてみれば、サイボーグが正常であり、非サイボーグが特殊(アーミッシュのように)なのだよなあ。良くも悪くも宣言=政治思想の表明であり、歴史の一部になっているという印象。
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