物語ソウル
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物語ソウル / 感想・レビュー
nina
中上健次と荒木経惟の共著で表紙面には「物語ソウル 中上健次」、通常の裏表紙にあたる面には「物語ソウル 荒木経惟」とあり、中身はソウルを舞台にした中上健次の小説とアラーキーの写真が2ページごとに交互に配される構成。装丁と構成は日本の現代美術界を牽引したもの派の大家、李禹煥が担当しており、三者の個性が不思議な形で融合した実験的な作品といえる。表紙とは逆にアラーキーがソウルの表世界を外側からの視点で切り取っているのに対して、中上がソウルの裏世界をそこに「路地」を再現することによって独自に構築しているのが面白い。
2014/09/21
tom
中上健次と荒木経惟のコラボ。中上健次はほとんど初読み。手に取ったことはあるけれど、粘りつくような文体が肌に合わず、最後まで読んだことは(たぶん)ない。この本では荒木の写真が加わったためか、少し楽に読める。ソウルで暮らす女性が主人公。知り合った男はベトナム戦争帰り。帰国後、周囲の冷たい眼差しに遭い、兵隊仲間と「義賊」を始める。金持ちの家や倉庫に押し入り、財物を奪い、河原にばらまく。主人公が男と知り合ったことで、仲間関係が変わり、破滅に向かう。当時の韓国の喧騒を文字と写真で描いている。
2024/04/19
渡邊利道
そういえば未読だった。ソウルを舞台に、夫を失って首都に出た子持ち女と、ベトナム帰りで義賊を気取るならずものの男の出会いと性愛を描く中編。中上にとっての韓国はほとんど時代劇かファンタジーの舞台で、古風な男女とヤクザの血の諍いの物語を気持ちよさそうに語っている。歴史を背景に繰り込みやり方はかなり意識的なものだろうか。長さもちょうど良く、写真はまったくいらないがなかなか面白かった。
2016/06/01
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