あゝ、荒野
あゝ、荒野 / 感想・レビュー
A.T
ああ、これは戯曲「書を捨てよ町へ出よう」の小説版なのだ。荒野に独りいる吃りの〈バリカン〉と不良少年の新宿新次のボクサーの闘いなのだが、チカラの差は歴然としている。〈バリカン〉は意識する。二番目としてしか生きられない男からみた一番の男への距離感を。それを埋めるには闘いしか残されていないことを。
2016/12/18
Hiroki Abe
60年代、東京、それは正しくディスコミニュケーション。モダンジャズのように即興的に各場面が展開されていく物語、そこに突然、森山大道の60年代、東京を切り取った写真が立ち現れる。そこには果てまで広がる、まるで荒野のような風景が★
2017/06/07
保山ひャン
寺山修司唯一の長編小説。人を憎めない吃りのボクサーバリカン健二と、歌や女にも強いボクサー新宿新次を中心に、自殺機械研究会、同性愛秘密結社ユリシーズ、ズベ公と老娼、逃げ馬、家族あわせ、死人の写真を集める女など、寺山らしい道具立てに満ちていた。学生時代に読んだときは、寺山にしてはもたついた展開であまりいい評価はしてなくて、今読んでもそれは確かにそのとおりだけど、じゅうぶんに面白かった。ラスト4ページのボクシングの結末など、前代未聞なんじゃないか。森山大道の写真がまた当時の60年代を体感させてくれて、すごい!
2016/08/18
那由多
初 寺山修司です。<バリカン>の感情が掴めそうでつかみきれない作品でした。新宿新次の「解説なんか聞きたかねえよ。俺には俺の読み方があるんだ。」の台詞が果たして漢字の読み方に対してだけのものなのか?新次の生き方、スタンスを表していると思うのは、深読みのしすぎなのか?
2015/11/15
まじゅ
寺山さんの文章もさることながら、森山さんの写真がイイ。高度成長期に突入したこの国の、雑多でパワフルでどこか怠惰な感じがストレートに伝わる。
2011/10/15
感想・レビューをもっと見る