空虚人と苦薔薇の物語
空虚人と苦薔薇の物語 / 感想・レビュー
yn1951jp
巌谷は、石の中に住み外からは見えない「うつろびと」や虹の色にはない色に光りかがやく「にがばら」は『絵にも描けないもの』だという。しかし建石は描けないはずのそれらを描き、「類推の山」を描く。あとがきも興味深い。「類推の山」と澁澤の「高丘親王航海記」の天竺への旅とのアナロジー。病床で書かれ、著者あるいは主人公が死に至る類似性。途中で途切れた物語は、これ以上に先を描く必要がない旅。大きな物語は小さな物語を繰り返す。私も「非ユークリッド的にして、真実を語る、冒険」に旅立つ夢を見ている。
2015/03/24
内島菫
建石修志の絵は硬質なようでいて、光源のわからない光を受けて、あるいは発して、どこか夢見るような風合いをたたえている。これが幻想的な印象を生むのだろう。空虚人(うつろびと)は自身が死者のような空虚であるためか、石や氷の中に住みその表面までしか現れることがない。つまり彼らは鏡に映る像のようなものではないだろうか。だから「ちょうど剣が鞘をもち、足が足跡をもつように」、人間はみな山の中に「それぞれ自分のうつろびとをもち、死んでからはそれにはまりこむ」といわれるのだろう。
2021/10/31
いやしの本棚
もともと『類推の山』の話中話を絵本に仕立てたものということで、短いのですぐ読めてしまう。でもちょっとこれはとても、非常に面白かったので、『類推の山』を読まねば!と思った。空虚人(うつろびと)という象徴(?)が興味深い。建石修志氏の絵も硬質で美しく、このお話にふさわしいと感じた。
2014/12/27
保山ひャン
ルネ・ドーマルの『類推の山』作中の物語(話中話)を独立させて建石修志の画をつけたなんとも豪華な本。翻訳者の巌谷國士があとがきを書いている。たしかに、この話中話だけ取り出しても、充分に独立した物語として成立しているのがすごいし、もとの『類推の山』のなかで、この話がどうはめこまれているのかも、再読して味わいたくなってきた。
2015/02/10
龍國竣/リュウゴク
『類推の山』の「話中話」を独立させ、建石修志の絵と併せて一冊の本に仕上げている。絶対零度。そんな表現がぴったりと合う。水色や青、もしくは鉛筆で描かれた硬質な建石の絵が、様々な人間の想像の源泉となった本作を凍らせ、結晶化させているようにみえる。
2014/11/12
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