ジュリアとバズーカ
ジュリアとバズーカ / 感想・レビュー
かりさ
色彩の薄い静謐さと凍えるほど冷酷さがまとう描写、凛と毅然と他者を寄せ付けない強さの一方で、見せる幻視の世界はとても危うく不安定で、孤高の夢の幻影に揺さぶられる。愛されたい、生きてる実感が欲しい、さびしい、恐ろしくさびしい…叫びが痛々しいほど孤独と絶望を呼び寄せる。無機質で静謐な世界に私の存在は見えない。バズーカは果たして彼女を光へと掬ったのかしら。潔いほど自身を顕にする切実さに惹かれてやみません。《 幸福が消え去ってしまったのはわたしのせいだったのだろうか?》―特に「今と昔」が好き。
2020/03/05
カフカ
先日読んだ『アサイラム・ピース』と負けず劣らず心が不安定になる短篇集。 共感力が高く、精神の病を患った経験のある人は読んでいて苦しくなると思う。 それでも手に取りたくなるのは、ある種の中毒症状かもしれない。 (わたしは少し参ってしまったので、しばらくはカヴァンの世界から離れようと思う。)
2024/02/23
藤月はな(灯れ松明の火)
「生きていると足元が不安定な暗闇に足を取られて背中から永遠に墜ちていくようで不安で、不安で仕方ない」、「自分を生に繋ぎ止める筈の存在も些末なものにしか思えない瞬間が怖い」、「愛するが故の孤独、愛しているからの孤独」、「自分も含めて誰も『私』のことが分からない」、「他者への嫌悪とそれでも一人では生きられなくて、他者を欲してしまう矛盾への忌まわしい」、「いっそのこと、心も、感情もなくなってしまえばどんなに楽だろうか・・・・・」情緒不安定時に感じた全ての感情を根こそぎ、見せつけられるような作品集。
2013/07/14
HANA
世界は残酷なものだし、人間は汚れに満ちたものだ。『アサイラム・ピース』の静謐さはないものの、その分神経症的な世界がダイレクトに伝わってくるような作品が多く読むのが少々辛いほど。「以前の住所」の自分の血による洪水や「ある訪問」の豹と男性、「クラリータ」のジャングルなど幻視のイメージがなんとも素晴らしいが、それ以上にこの本全体を覆う喪失感がなんとも言えず心に響く。特に「ジュリアとバズーカ」「ある訪問」、特に前者の終末観は『氷』を思い出させる。多少とも神経質な人間には、相性が良すぎて危険なほどの一冊だった。
2013/05/05
nina
純潔の清らかな白い粉はこの汚れきった生き物の巣窟からわたしを遮断する。何もかも、この世に存在するものなどほんとうは何もないのだと、少しだけ思わせてくれる。だからバズーカ砲のことを考えると安心するのだ。でも、気がつくと、わたしがここに在る世界から逃れようと全力で疾走してる。どこまで走ってもこの世界から逃れるのは難しいのかもしれない。かつては、大声をあげて助けを求めたこともあったけど、だれもその声に気がついてくれる人はいなかった。だから今はもう声をあげる気にもならない。投げ出された孤独は絶望すら知らない。
2015/01/29
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