冬の皇帝 (野呂邦暢小説集成4)
冬の皇帝 (野呂邦暢小説集成4) / 感想・レビュー
shouyi.
「剃刀」が読みたかったのでこの本を図書館で探した。 確かにミステリー仕立てでミステリー作家なのかと錯覚する。しかし、他の小説は味わいが違う。とはいえ、小器用な人とは思えない。でも、心惹かれる。なぜかは分からないが、とても魅力的だ。
2021/03/18
Voodoo Kami
いわゆる野呂さんの王道と見なされる作風とは異なる、だがエッセイを読んでいれば十分にうなずけるミステリ仕立ての短編が収録されているのが特徴。その一方で表題作や、「とらわれの冬」は著者の青春時代を振り返る一連のシリーズ。特に後者は現実と理想の狭間でもがき苦しむ主人公がある晩突然ペンを取り、翌朝にはその原稿を破り捨てるも「目覚め」る瞬間が描かれ、その後の「至福感」の描写と相まって、まさに青春の終わりを告げるもの。20年近く前の自分の心情をここまで瑞瑞しく、決して達観せずに書いたことに凛とした矜持を感じました。
2015/07/02
あきこ
短編小説集。しかし今までの作者の作風とは少し違っていたように思う。どの作品も少し不気味でミステリー色がある。そしていつも通り舞台は長崎、諫早であろうと思われる。自分探しの若者が彷徨う姿は野呂作品らしい。詩のような小説であるのに心の奥にあるネガティブな感情が描かれると、一層の怖さを感じるように思う。作者の引き出しの奥深さを思い知らされた。
2015/01/21
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