鬼の詩・上方苦界草紙
鬼の詩・上方苦界草紙 / 感想・レビュー
hit4papa
芸能に生涯を捧げた(というより芸能に魅入られたというべきか)男たちを描く、まさに芸道小説ともいうべき作品集です。 娘を捨て渡英した大道芸人夫婦のはて「泣尼」、自殺癖のある落語家とその妻「浪花怨芸譚」、私小説風の川島雄三監督との師弟関係「生きいそぎの記」。旅をしながら妓楼の前で三味線を弾く姉妹「上方苦界紙子」(映画化作品)は、二人の鬼気迫る演奏風景が目に見えるようです。狂気の芸人が朽ち果てるまでを描いたタイトル作は、唯一無二の芸を目指す男の自負、嫉妬、羨望がうずまいて息苦しさすら感じます。【直木賞】
2018/06/09
renren
底なしの闇にも似た「芸」の世界を喘ぎ這いずり回る芸人たちの短編集。「芸に命を捧げる」「至上の美の追究」なんていうおキレイな言葉ではない、泥と血と汚穢にまみれた求道の記。人間であることも捨てられない、勝つこともできない無器用な人々の生き様、なんとも凄みがある。血腥い場面や穢いものをあえて描くようなシーンも多いのである程度の気合を持って向かうことをお勧めします。軽い気持ちで読んでえらい目にあった。でも離れ難い奇妙な魅力、一気に読んでしまいました。
2010/03/21
八丁堀
明治の末、大阪の寄席で、その芸は狂人と云われた桂馬喬の生き様の物語。子供が腸炎を患った時、わが子の肛門に唇を寄せて、酸性の強い匂いを放つ便を吸い出したり、妻の屍を褌ひとつで、横抱きにして、妻の肌に温みをつたえようとしたり、天然痘に罹病し無残なあばた顔に変形した自らの顔を利用した鬼の噺で高座に復帰し、痘面の窪みに、煙管の雁首を釣り下げる珍芸を究める為に命を賭す男の芸への執念の男の生き様が乾いた綴りで、不気味に、巧みに語られる。
2012/11/16
pagrus55
☆☆☆☆
2016/04/20
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