奇想遍歴
奇想遍歴 / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
よくもまあこんな話を思いつくものだ、と驚く風変りな物語ばかり。私が最も好きな短編集の一つ。装丁も含めて、もうなくなってしまったパロル舎らしい本だと思う。「学識に優れた立派な教授たちが、ある学会の帰り道で大きな球に出くわした」という文で始まる「球と教授たち」が好きだ。奇想天外な物語ながら、詩情がみなぎっている。その白い球の色が変化して、星のように銀色に輝き空に帰る描写が美しい。再読して「余白の精の仕事」も面白かった。心のページに余白を作って、感情が溢れ出ないようにしている妖精がいるそうだ。
2017/10/24
内島菫
短編や掌編が57編収められている(細かい目次がないのでつけて欲しかった)。「誰もと同じような王様」の、本物の王様が身分を隠して逃げ出し、役者として偽物の王様を演じるというねじれ現象が面白い。この作品に限らず本書は一貫して本物と偽物、現実と非現実等をツイストさせ、そうした対立との間に奇妙な対話を成立させている。「天職の発見」では、サーカス団の空中ブランコ乗りの娘に恋した治安判事が衆目環視の中、彼女に愛の告白をし続けるが、後に二人は本当に結婚しサーカスの見世物として「目的のない求愛」を繰り返す。
2023/03/05
H2A
奇妙で、不可思議な作風。2、3ページ程度のショートショートが中心だが、脈絡はあるのだが、なぜあんな展開を考えつくのかよくわからない。そのインパクト、奇妙な風味はアメリカのスタージョンのよう。エロスを感じさせながら少しもいやらしくならない。フランスの幻想作家ということでさほど知られてはいないが、それからこの表紙はいただけないが、必ずやその奇妙な魅力に惹かれる人がいるだろう。
2014/11/28
ぶうたん
エディシオンアルシーヴの瀟洒な装丁が印象深い「水蜘蛛」の著者。一言で言えば掌編集だが、ここはフランス風にコントと言うべきか。夢のようなもの、エロティックなもの、言葉遊び、諧謔味に溢れたものと内容は様々だが統一して言えるのは「奇想」である。変な妖精とか生き物たちも本邦の妖怪のようで印象深い。まあフランスらしく猥褻なところや残酷なところも多いので、ユーモラスな表紙ではあるが、子供向けでは無いだろう。幻想的な作品が好きな人はパラパラとページを捲ってお気に入りの作品を見つけるのも一興だろうと思われる。
2024/01/08
timeturner
作者は夢見る人だ。それも優秀な夢製造人だ。素敵な夢、愛らしい夢、笑える夢もあれば悪夢や残酷な夢、忌まわしい夢。夢にはモラルも教訓もなく自由奔放だ。読者はそうした夢にすっぽり包まれ、夢であることも忘れ、完全に没入でききる。
2023/07/08
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