従妹ベット 下 (バルザック「人間喜劇」セレクション <第12巻>)
従妹ベット 下 (バルザック「人間喜劇」セレクション <第12巻>) / 感想・レビュー
ケイ
上巻の面白さが逓減していく…。ヴァレリーとベットがいかに騙していくかに専念して攻撃し続ける。が、実際にはありえないし、ヴァレリーのような女でも男を手玉に取ることについて常勝とは言えず、どんな勝ちにも付随する負けがあるのだからと、読み手のこちらが冷静になってしまうと、楽しくなくなって、「ええい、この人達はどうにでもなれ!」という気分に。そして、全てをひっくり返すきっかけを作ったあの人は誰なのか、ものすごく気になる。
2018/02/28
syota
うーん、そうだったのか。この小説の主役は、まぬけな男どもを踏み台にのし上がっていく悪女達でも、夫の帰りをひたすら待ち続ける貞淑な妻でもなかった。騙されても裏切られても懲りずに女に入れあげ、地位も名誉も財産も全て失いながら、それでもめげずに次の女を追いかける、稀代の放蕩親父が主役だったのだ。女好きもここまで徹底すると、むしろあっぱれ。悪女達の非道な振る舞いに嫌悪感を抱く読者を、勧善懲悪の大団円で満足させつつ、最終章であっといわせて放蕩讃歌を歌い上げる作者の手腕は水際立っている。[G1000]
2016/04/16
みつ
下巻に到っても基本的な物語の構造は上巻を引き継ぎ、終わり近くまで大きな転換は訪れない。男たちは(印象の薄いユロ男爵の息子を除き)相変わらず愚かなまでにヴァレリーに首ったけであるが、彼女を得ようとする手段が常に金銭であるのがいかにもバルザックらしい。ヴァレリーと同居生活を送りながら男爵家にも近づくベットの策略家ぶりも際立つ。進退窮まった男爵に救いの手を差し伸べたのが思わぬ人物で、そこから物語は大きく動く。いかにも怪しげな老婆が最後の幕引きをしたかと思いきや、さらに驚きの結末に。なるほどこれは「好色一代記」。
2022/07/23
ラウリスタ~
下に入ると素晴らしく面白かった。ゾラの『ナナ』を思わせるマルネフ夫人の最期。『マクベス』の魔女みたいな「あいつを殺してあげますよ」と提案してくる謎の婆さん。ユロ男爵はパリの辺境に逃げてなお、女を囲い続ける。ベットの復讐は失敗し、彼女はマルネフ夫人へ同性愛的な友情を抱いていたことを、彼女の死の知らせで実感(娼婦同士のレズとして『ナナ』では露骨に)。あの貞淑なアドリーヌが、家族を救うために殉教者の覚悟で娼婦になる決心をし、出来もしないふしだらな化粧を試みるシーンは圧巻。金と女が区別できないまでのアマルガム。
2020/04/10
Masako33
初バルザックの長編(にしてはマイナーな小説を選んでしまったか)。色欲、金銭欲、出世欲、嫉妬といった人間の醜さが、これでもかというくらいに繰り広げられる。しかし、あまりにデフォルメされすぎているので暗さはなく、コミカルな、まさに人間喜劇。好色ユロ、貞淑な世間知らずのアドリーヌ、嫉妬の鬼ベット、魔性の女ヴァレリー、俗物クルヴェル、登場人物はそれぞれの価値観で一生懸命に生きていて、ある意味みんなかわいく見えてくる。人の世の愚かさも天晴れだと思った。
2017/04/16
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