戦後占領期短篇小説コレクション 1 1945-46年 (1)
戦後占領期短篇小説コレクション 1 1945-46年 (1) / 感想・レビュー
ひねもすのたり
敗戦直後から、その翌年までに発表された作品を集めたアンソロジー。 戦争をはさんで近代と現代に分けられる文学史ですが、その間にあった混沌を明確に見出すことができます。 定番である田村泰次郎『肉体の悪魔』と坂口安吾『戦争と一人の女』を含め10篇が収められています。 一番ガツンと来たのは八木義徳『母子鎮魂』このアンソロジーの核を成す作品です。 あの時代に作家は何を描こうとしていたのか?ではなく、あの時代人々は何を読み考えていたのか?という視点で読むと、さらに興味深い読みものとなる筈です。 明日は終戦記念日です。
2012/08/14
がんぞ
田村泰次郎の『肉体の悪魔』、支那共産党員(秘密メンバーだが思想が強く品位があるのでわかると)の女が帝国軍人と情愛関係となり、八路軍の大将軍・朱徳の思い出を語る。皆と交じってスポーツしたりボロ靴下をからかわれたりベンチャー企業のような雰囲気。平林たい子は左翼作家だけあって敗戦を解放ととらえたが、戦後の共産党の機会喪失への感想も読みたい。八木義徳『母子鎮魂』は48年発表だが3.10大空襲を扱っているので占領当初には検閲を通らなかっただろう。朝鮮人に迫害されたであろう引揚げ題材が無い、『竹林はるかに』入れるべき
2014/06/10
さんくん
「肉体の悪魔」が好みでした。中国サイドにも「転向文学」(日本人が語り手だし、件の女性は最後までスパイだったようで厳密には違うでしょうが)に相当する出来事が成立するのだなと、単純な事実ながら視野に入らなかった点でした。女性との関係で戦争を描く手法はほかの小説にも通底していますが、戦争は女の顔に映されるという具合でしょうか。男の視点かもしれませんが。
2019/06/03
readmit
戦中戦後の過渡期、作者各々の感じ方、表現のしかたがあるなか、悲壮感や絶望感はあまり感じられなかったのは少し意外
2022/08/15
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