アジア無銭旅行 (ランティエ叢書 18)
アジア無銭旅行 (ランティエ叢書 18) / 感想・レビュー
勝浩1958
氏の無頼が何とも言えず心地よい。いまに生きる私たちが失ってしまったものを氏は体現している。無計画性が誘引する無垢なままの痺れるような出逢いと感動。全身が研ぎ澄まされた感覚器官であることによる狂おしいばかりの好奇心。アジアのじめじめした暑気と饐えたような臭気に覆われた状態のままで、いまも金子光晴は読者のうちに蘇る。
2014/11/29
ピン
アジアの湿度や匂いまで伝わってきそうな生々しさ。うわっ…と思いながらも最後まで読んでしまった。 昔の作家の駄目男っぷりは、なんかこう今とはレベルが違うので読ませられてしまうな。 解説にあった「欠損美人」が印象に残った。ちょっと意味は違うけど、美形って異形だなぁと思っていたので。
2018/09/01
ohashi
詩人である筆者がまとまったお金をもたずに、道中、自作の詩や絵を売り旅費を現地調達しつつ旅するアジア。詩人の目でみるアジアの光景は生々しく力強い。それを表す詩人の書き言葉も同様に生々しく力強い。無銭旅行と題名にあるが、バカンスとか自分へのご褒美とか、そういう楽しそう気分は皆無で、なんというか苦役みたいだ。旅行とはとても思えない。「印度の女だけがもっている、つくられたものではない、生まれながらの情念の眼であった。」この眼を視ている詩人の眼もまた作り物ではない情念を宿している。
2013/05/28
えぐざいる
蘭印紀行が感興的逍遥記であるのに対してこれは『行きて帰りし物語」、玄牝のごときアジアを未来無く、未来を求めず、せつな的に旅する姿が迷宮に迷ったようにけだるく心地良い小説でした。昭和初期の船旅の有様、東南アジアの風物も物珍しく興味深い
2011/06/06
ちあき
巴里行三部作からの抜粋がほとんど。あとは代表的な詩がいくつかと、アジアについてのエッセイが一編。描きだされる世界はよどんでいて、湿っていて、腐臭がする。じゃあ書き手本人はどうかといえば、やることなすことかなりダメダメ。それでも、ひとりの人間の魂の放浪が克明にしるされているから、嫌悪感なく読めてしまう。リアルを感じとれた人は、『どくろ杯』『ねむれ巴里』『西ひがし』と読みすすめてほしい。
2009/02/04
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